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甘味桜のゆるゆる甘味処

このブログは私甘味桜がアニメの二次小説や感想を書くブログとなっています。
主なジャンルはハマトラのナイアト、黒バス黒子受け、ハイキュー!!の大菅などを書きたいと思っています。


ハマトラ学園の文化祭は、かなりの盛り上がりを見せていた。
学園の生徒はもちろんながら、他校生や一般の客、中学生、幅広い年代の人々が楽し気に学校内を歩き回る。
普段ならばすることのない、かぐわしい香りが鼻孔をくすぐり、普段なら着る事のない衣装に心躍らせ……。

それはもう、とても幸せそうな空間なのだが。
その空間にそぐわない表情で、校内を歩いている人影が一つあった。

  その人影は、服装だけを見れば文化祭に見合った衣装に身を包んでいる。

白いフリルのあしらわれた黒いワンピースに、純白のエプロン。
首元には、鈴が付いた真っ赤なリボンが飾りつけられ。
歩くたびに可愛らしく揺れる猫のしっぽと、それと揃いの猫耳付きカチューシャ。

 

いわゆる、猫耳メイドの格好だ。

 

とても愛くるしい服ではあるのだが、むしろこれがこの人物の表情を曇らせている。

何せこれを着ているのは、可愛いものにはしゃぐ女子ではない。

 

アートという、女性的な顔立ちの男子なのだから……。

  「どうして僕がこんなことを……」

 重苦しく響く彼の呟きは、ただ虚しく空間の中に溶けて行った。

 

  アートがこうして、校内を歩くことになった切っ掛けは、三十分ほど前に遡る。

彼らのクラスの出し物は一応、『猫カフェ』となっているのだが、その実態は先ほどのことから分かるよう、単純に男子生徒が、猫耳メイドの服装で接客を行うだけの、メイド喫茶だ。

流石にこの異様な雰囲気には、客が寄り付く訳もなく、この学校の保険医であるレシオがサクラをやっても、お客がやってくる気配はまるでなかった。

そこで、クラスメイトであるナイスとバースデイが提案したのが、アートが店の看板を持って、校内を歩き回る事である。

アート本人は気付いていないようだが、彼はこのメイド服が非常に良く似合っていた。
彼がこの服でアイドルの真似事でもすれば、金儲けができるかも……という程度には。

アートはもちろん断った。

「こんな服装で出歩くなんて、絶対にごめんだ!」と。

だが、ナイスたちの圧しは強く、結局断りきれずに今の状態に陥ったのだ。

 

 

 

「もうそろそろ、帰ってもいいかな……」

 

アートは手に持った看板を見つめ呟いた。
もう三十分も、この服装の羞恥に耐えて歩き回ったのだ。
しかも、『猫 Café ニャーウェア』なんて書かれた看板をもってだ。

ナイスたちには、「とりあえず歩くだけでいい」と言われたが、これで集客が狙える気もしない。
教室に戻って、やっぱり駄目だった、と言ってごまかそう。

そう心に決めた時だった。

 

「ねぇ、そこのメイドさん」

 

突然声をかけられた。

恐る恐る振り向くと、そこには二人の男性客がいた。

歳は自分たちよりも少し上だろか。
少々派手な私服に身を包んでいる。

「その服、君たちの出し物の衣装?」
「えぇ、そうですけど……」
「へぇ~、凄く似合ってるね! 可愛いよ」
似合っている、なんて嬉しくもない言葉にアートは愛想笑いを浮かべながら、「どうも」と返す。

「猫カフェ……。メイド喫茶じゃないんだ?」
「まぁ、一応猫カフェです」
「じゃあ、君以外にも猫耳のメイドさんがいるってこと?」
「……いますよ」

  ここに来て、アートはようやく気が付いた。
この二人が、自分のことを女生徒だと思っていることに。
そして、あろうことかナンパしているのだという事に。

  「ねぇ、このお店いったら君が俺達に接客してくれる?」
「俺達、可愛い女の子が接客してくれたら凄く嬉しいなぁ」
「えぇっと……」

 どう断るべきだろうか。
どうにか思考を働かせるも、良い答えは浮かばない。

こんな時、ナイスがいたなら何かいい案で、この場を突破してくれるのだろうか……。

 

その時――

 

「あんたら、なに人の彼女に絡んでるの?」

少しばかりの怒気を含んだ、聞き覚えのある声がした。
驚いて振り返るとそこには、なぜか学校の制服に身を包んだナイスがいた。

「ナイス!?」
「俺の彼女が可愛いのは分かるけど、絡まれると困るんだよね? あと、うちの店指名制じゃないから」

いくぞ、と言われ腕を引かれながらその場を後にする。
先程の二人は、唖然としてこちらを見つめていた。

「ありがとう、ナイス。助かったよ」
「べつに、気にすんなって」
「でも、さっきの彼女って……」
「そ、それも気にすんな!!」

 

この騒動の後。

アートの可憐さに魅了された者たちが、彼が店に戻るのを待っており。
教室内が客にあふれ。
一部の女子たちに、制服のナイスとメイド姿のアートのツーショットを撮らせてほしいという希望が殺到するのだが。

これはまた、別のお話。