準備編②


2025年5月

(旅行の5ヶ月前)

玉川温泉への湯治旅行を決める

【リフレッシュ休暇を活用して旅にでよう】
私は仕事柄お盆や正月も関係なくまとまった休みはなかなかとれないのですが私が勤める職場では5年に一度リフレッシュ休暇制度というのがあり勤続5年ごとに10連休の休暇が取得できます。

「仕事を離れて心身の疲労を回復させてその後の労働意欲をアップさせる」というのがリフレッシュ休暇の目的です。

ちょうど今年が対象年。前回5年前はリフレッシュ休暇を取るには取れましたがコロナ初年度だったので大人しく休んでいた記憶しかないです。

その意味で今回のリフレッシュ休暇は10年ぶりといってよい旅行つきの連休です。

涼しくなる10月に取得することにしました。

【湯治旅へのいきさつ】
私は今年の春先「リフレッシュ休暇は秋田県にある玉川温泉に行こう!」と妻に声をかけました。

いつ頃から玉川温泉に興味を持ったのかといえば2023年春に私が膀胱がんにかかり手術を経てBCG治療に入ってから2年目の2024年になります。BCG膀胱注入治療を2023年6月から開始して予定では今年2025年4月まで21回注入でしたが去年11月の注入期間に副作用が強くなり残り3回は断念して18回で終了となりました。

医療的な治療でがんの再発予防をするのは2024年11月で終わったのでその後は自身の免疫力を強くしてがん細胞に負けない身体作りを目指すことにしました。

その一環で今回は玉川湯治を選んだわけです。


【玉川温泉とは?】
玉川温泉はがん患者の間では有名なパワースポットです。昔から皮膚病やリウマチや関節痛をはじめとした治りにくい病気に苦しむ人たちが訪れて何日も滞在して治癒を目指したという歴史や伝統がある場所です。

そして玉川温泉から湧出する日本一強酸性の湯と自然研究路内にある世界に2箇所だけしか存在しない北投石が出す微量放射線はがん患者の免疫細胞を活性化させてがん細胞と戦う際、免疫力を優位にさせる効果があるそうです。それが結果的にがんが小さくなった、余命宣告から何年も生き続けているという多くのがんサバイバーたちの成功談となり日本中、世界中に玉川温泉の名が広まりパワースポットになったのです。

私はそんな玉川温泉の関連本や関連動画で魅力を知りどんどん興味をもち『玉川温泉へ絶対に行くんだ!』の気持ちに変わりました。

私のリフレッシュ休暇はこれまで観光、レジャー、遊び要素が強かったのですが今回は観光3割湯治7割にしています。

【最初の準備は宿の予約から】


リフレッシュ休暇は自分で好きな時期を選べるので5月中に人事へ10月の取得を希望してすぐに承認されました。

次に行う準備は旅館の予約です。

玉川温泉には玉川温泉と新玉川温泉のふたつの旅館があります。

玉川温泉旅館の創立は昭和7年1932年。

姉妹施設の新玉川温泉は平成10年1998年に創立した新しい旅館です。

玉川温泉旅館には自炊部と旅館部があり自炊部には厨房がありご飯を炊いたり調理する設備が揃っています。

旅館部は朝夕2食付でスタンダードな旅館と同じです。

私は自炊部にしようと申込みにトライしましたが10月中旬の自炊部はまさかの満室でした。半年前でこの人気ぶりには恐れ入りました。

旅館部は空き室があり予約を入れられました。

10月中旬から妻と2人で2泊。仕事もある妻は3日目まで。私はリフレッシュ休暇中湯治を続けるためさらに延泊して計7泊8日。

愛猫あまおうのお世話は妻と知り合いのペットシッターさんにお願いすることになり無事旅行日程決定&予約完了となりました。

つづく

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序章 準備編①

湯治へ行こう!


皆さんこんにちは。

私は2023年3月に膀胱がんの告知を受けました。
その時は「この先どうなってしまうのか?」という不安や「なぜこんなことに?」という疑問や怒り、膀胱がんを知るにつけ襲ってきた死への恐怖、そこから現実を受け入れて治療へ向かおうという覚悟…
決して段階的じゃなく日々揺れ動いた気持ちを正直に書こう。
そして同じ病気になられた方々やそのご家族に私の治療経過を詳しくお伝えして皆さんのお役に立てればいいなという思いでブログを書き始めてみました。

手術・治療から2年が経過した今年、運よくがんは無再発で推移しているため新たな目標を作りました。
その目標は…

【玉川温泉に湯治へ行き日々のレポートをブログ発信する】ことです。
がん患者が一度は耳にしたことがある秋田県の玉川温泉。
ある人によっては命を再生してくれた場所、皮膚疾患、関節痛、がんをはじめとする病に罹った人たちの駆け込み寺であり聖地といってもよい玉川温泉に私自身も出向いて実際に再発予防と腎機能維持目的の湯治をし、記事にしてお届けしたいなと思い立って連載していくことに決めました。
どうぞよろしくお願いします!

つづく

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https://www.poplar.co.jp/pr/oyatsu/

『ライオンのおやつ』

小川糸著  2019年発行


【瀬戸内海の小さな島にあるホスピスで穏やかに生をまっとうした33歳末期がん女性の物語】

私はがんになってから読書はかなりするようになった。大半は闘病記かがん専門医が書いた本か猫の本だ。闘病の様子をYouTube配信されているいわゆる闘病系ユーチューバーの動画もかなり見てきた。

でも、唯一避けていたのが末期がん患者を描いた本だった。

理由は「自分がつらい治療をしている最中に緩和ケアやホスピスの本を読んだら私自身弱気になってやがて本当に腫瘍が進行してしまうのではないか?」と思ったから。

弱気は最大の敵とばかりに緩和ケアの本は読まずつらい抗がん剤や放射線治療をがんばって乗り切ろうとされる人たちの闘病記や腫瘍専門医師が書いた本を読んでいた。

そのおかげもあってか私は今も再発なく生きている。


【2年半経過して心境に変化】

私はがんに罹ってからの2年半で色んな出会いがあり学びがあった。

がん友達の中には今まさにホスピスへの引っ越しを検討している人もいるしアメブロのフォロワーさんたちも皆さん様々な病状だ。

そんなフォロワーさんの中に『ライオンのおやつ』を読んで心洗われたという記事がありアマゾンを開くとこの本はすごい数のレビューが書かれてテレビドラマ化もされたような作品だとわかった。

ホスピスが舞台の本だったが今の私は強気にしなければならない時期ではないし本活の一環でよいかなと思いさっそく購入して読んだ。


【感想 ネタバレあり】

・瀬戸内海の静かな海を眺めるホスピスのロケーションが素晴らしい。


・主人公の女性ががんになった後、怒りからぬいぐるみを壊したり投げつけたりする葛藤、やがて現実を受け入れて壊したぬいぐるみを縫い直す行動は人間らしくもありすごく共感できた。


・主人公がライオンの家で過ごした期間はわずか1ヶ月なのにマドンナことオーナーの母性、調理スタッフ姉妹や歌のボランティア、似顔絵描きのボランティアとの交流、ワイン畑で働く青年とのデートに儚い恋愛感情、ホスピス仲間との交流、ホスピスで飼われている犬との触れ合いでまるで何年も過ごしているかのような濃密な時間を過ごしていたことに緩和ケアという場所に抱いていた悲壮感のイメージは払拭され安心感ややすらぎを得られた。


・主人公は地元の人間関係や親族との関係を終わらせて単身ホスピスに引っ越してきた。

しかし、主人公の友人から事情を聞いた父親(死別の実父ではなく育ての親)がまだ主人公が見たことないもう1人の娘(主人公にとって妹)を連れてきて合わせてくれた。再会した時は主人公がもう食べれない声も出せない、モルヒネで痛みを取る状態の中、最後の最後で父親と妹がきてくれた。結局人って1人じゃないんだ。どこかで誰かが見守ってくれていざという時は手を差し伸べてくれるものなんだと思えた。


・後半の主人公のもとへ天国から降りて声をかけてくれた訪問者たち。

主人公よりわずかに早く逝かれたホスピス仲間、主人公より若い年齢の時事故による死別をした母、ホスピスの愛犬の元飼い主たちとのやりとりは涙なしには読めなかったがこれこそが「天国ってほんとうにあったんだな」と読者に気づかせてくれる。

「天国なんて人間が都合よく作ったものにすぎない」と冷静に思う人もいることだろう。でも天国があるないなんて今生きている人は誰一人証明できないのだから人は亡くなれば天国で先に逝った者と再会できる可能性だってあるはず。

そこに死を迎える者、残される者の救いがある。

そんなことを思わせてくれた。


・ライオンのおやつの意味。

ライオンの家の由来はライオン=誰からも襲われることなく安心して暮らせる場。

おやつ

「週に1回ホスピス利用者の中からリクエストを受けて手作りしたお菓子」が一品出される。リクエストには幼いときのエピソードがありオーナーがリクエスト者の手紙を読んで思いを込めてみんなで食べる。


【51歳の今この本に出会えてよかった】

これまでたくさんの闘病記の本を読んで刺激や感銘を受けたが『ライオンのおやつ』は自分がこの先何年後か何十年後か分からないが【死への備え】が必要になった時に何を考えるべきか?何を思い出すのか?残された家族や友人のためにできることは?

ということを考えさせてくれる本だと思えた。


もちろんこれからも私は明るく元気に過ごしていくが心の片隅にこの本の主人公のように私よりずっと若いのに残りわずかな命を過ごすことを余儀なくされた人たちの思いもしっかりと受け止めて一生懸命生きていきたい。


文学ユーチューバーベルさんの書評動画です