◯そもそもNISAとは…少額投資非課税制度。通常、株などを売却して得た利益や、株主配当金などの定期収入には約20%の税金がかかる。しかし、NISA口座で投資すれば、その税金がかからなくなる。

◯新/旧NISAの違い…非課税枠の拡大と再利用。

①一般NISAとつみたてNISAが一本化されて併用できる。(口座内に「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が設けられた)

②非課税投資できる金額が総額1800万円になった。

③非課税運用できる期間が無期限になった。

④運用資産を売却した場合、その元本分の非課税投資枠が復活する。

◯つみたて投資枠について

・投資対象…金融庁が選定した低コストのインデックスファンドやバランス型ファンド、一部のアクティブ型投資信託

・投資金額…年間360万円(総額1800万円)。つみたて投資枠で使わなかった分は、最大で年間240万円(総額1200万円)まで成長投資枠として個別株に使える。→つみたて投資枠600万円、成長投資枠1200万円、成長投資枠でもつみたて投資枠と同じ投資ができる。

◯成長投資枠について

・投資対象…成長投資枠は、つみたて投資枠の一部。なので、成長投資枠でもつみたて投資枠で投資できるインデックスファンドに投資できる。つみたて投資枠とは違って個別株やアクティブ型投資信託にも投資可能。個別株は日本株だけでなく、米国株や米国ETFにも投資可能。

◯新NISAのデメリット

損失が出ても救済措置がない。(課税口座の場合、損失が出たら確定申告をすれば一部が還付される。)ということで、出来るだけ損失が出ない可能性の高い投資対象に絞るべき。

◯生活費を受け取りたいなら高配当株

・配当金を受け取りたいなら、高配当株や高配当ETFに投資するのもいい。保有しているだけで、毎年株主配当金や分配金が支払われる。運用資産を切り崩す必要もない。ただし、個別の高配当株に投資するのは、株価の値動きが激しいので、様々な高配当株を集めたETFがよい。

◯資産形成期は「分配金再投資型」で攻める

・老後に向けて資産を増やしたいなら、分配金再投資型の投資信託を利用すべき。分配金を受け取ると、運用で得た利益を再び運用に回して、さらに利益を膨らます、複利効果が低下するから。

◯新NISA最大のミッションは?

・なるべく長期にわたって複利運用を続けること。非課税投資枠1800万円をなるべく早く埋めること。そして、なるべく長く活用すること。

◯一括投資かつみたて投資か?

・右肩上がりの続く投資対象で運用する場合は、一括投資の方がつみたて投資より得られるリターンは大きくなる。ただし、大暴落があるような場合だと、つみたてが有利な面もある。暴落期間に安い基準価格でたくさんの口数、つみたて購入できるので。これは「ドルコスト平均法」の効果です。

◯FIRE 4%ルールを使った定率取り崩し

・資産の取り崩し率が4%以下なら、株式の比率を50%以上にしておけば、25年間資産を食い潰してしまうことなく、資産の運用益と元本取り崩しだけで生活できる。(年率5%運用を続けた場合)

・老後生活に入ったら、「現金クッション」(株価暴落の衝撃を吸収するために用意しておく現金)の考えを持っておく。総資産のうち、毎年の生活費×5年分を銀行の預金口座にプールしておく。これが厳しいなら、年間の生活費のうち年金でまかなえる部分を除いた金額×5年分を蓄えておく。

◯投資はあくまで余裕資金で気長に

・日々の生活が成り立たなくなるのは、本末転倒。総資産のうち、株式の割合が高くなり過ぎると、株価の大暴落の時のリスクが高くなる。

◯特定口座の資金は新NISAに移し替え

・旧NISA口座の資金は売却しない。

・特定口座(一般口座)にある資金は現金化して、新NISAに再投資。ただし、新NISAの年間投資枠(360万円)以上の投資余力がある人は売却しなくてよい。


◯リターンが変わるファンド選定術

・新NISAでの具体的な投資対象は、S&P500か全世界株式に連動するインデックスファンド。

S&P500連動インデックスファンドは、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、SBI・V・S&P500インデックス・ファンド。ETFでも、インデックス投資ができる。

「インデックスファンド・ETF一覧」

*S&P500

・インデックスファンド

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

SBI・V・S&P500インデックス・ファンド

・国内ETF

iシェアーズS&P500米国株ETF(1655)

MAXIS米国株式(S&P500)(2558)

・米国ETF

VOO

SPY

IVV

*全米株式

・インデックスファンド

SBI・V・全米株式インデックス・ファンド

楽天・全米株式インデックス・ファンド

・米国ETF

VTI

*全世界株式

・インデックスファンド

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

SBI・V・全世界インデックス・ファンド

・国内ETF

MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信(2559)

・米国ETF

VT

ACWI

◯インデックスファンド(投資信託)とETF(上場投資信託)の違い

・インデックスファンド(投資信託)の特徴

自動つみたてができる。分配金をファンド内で再投資できる。(「分配金再投資型」が多い)

③日本円で投資可能。

・ETFの特徴

①最低購入可能口数が決まっている為、毎月定期

自動つみたてには不向き。②インデックスファンド以上に信託報酬が低コスト。③投資信託との最大の違いは、ETFでは、必ず分配金が支払われること。

・米国株、全世界株式、どちらの方がいいというのは無い。

◯成長投資枠が新NISA攻略の"肝"

・成長投資枠の上限1200万(年間240万円)に関しては、選択肢がたくさんある。つみたて投資枠600万円については、S&P500か全世界株式の分配再投資型のインデックスで複利運用するのはどのような運用でも共通。

・新NISAのモデルとなるポートフォリオ

①つみたて投資枠1800万円全て…S&P500か全世界株式インデックス→20代、30代の資産形成期に一般的。

②つみたて投資枠600万円…インデックス、成長投資枠1200万円…インデックス連動国内ETF→分配金を日本円で受け取り生活費に使う。

③つみたて投資枠600万円…インデックス、成長投資枠1200万円…インデックス連動米国ETF→運用コストが安く長期運用志向。

④つみたて投資枠600万円…インデックス、成長投資枠1200万円…日本高配当株や米国高配当ETF→より多くの株主配当金や分配金をもらって老後の生活費に充てる。

⑤ つみたて投資枠600万円…インデックス、成長投資枠1200万円…個別投資株→日本や米国の個別株に投資して2、3倍のリターンを狙うアクティブ運用。

・成長投資枠は分配金重視でもよい。上記④⑤のように、成長投資枠でインデックスに投資しないという選択肢もある。例えば、成長投資枠で株主配当金や分配金などインカムゲインがたくさんもらえる高配当株や高配当ETFに投資。他には、個別株やアクティブ型投資信託に投資して大きな利益を得る。

・インデックス投資は、投資期間15年が分岐点である。運用期間が15年を超えると、年間の平均リターンが4.2%〜18.9%のプラスになる。このことから考えると、15年以上も資産を増やす必要がなければ非課税で毎年、株主配当金や分配金がもらえる高配当株に投資をおこなうのが賢明かもしれない。こうすれば、生活費のために投資元本自体を取り崩す比率が減るので、安心感のある老後が送れるはずである。

・労働収入が無くなった後の老後生活の理想は、「年金収入+新NISA口座の高配当株からの年間配当収入>毎年の生活費」という状態。年金と資産運用から得られるインカムゲインだけで生活できれば、投資元本から取り崩して目減りさせることなく優雅な老後が送れる。

・日本の高配当株に投資するなら、時価総額1兆円以上の中から配当利回り4%以上という高配当株に。例えば、JT、ソフトバンク、日本郵政、など。

・業績が安定していて、日本株以上に配当利回り

が高く、しかも株価の値上がりも期待できる、米国高配当株への投資という選択肢もある。

・とは言っても個別株投資の場合、自分で銘柄入れ替えを行う必要があり、かなり手間である。

そこで、米国高配当株ETFがよい。

・有名な高配当株ETFとしては、HDV、SPYD、VYMがある。

・保有期間で選ぶ銘柄が変わる。2年以下の短期保有なら、分配金利回りが5%前後のSPYD。5年以上の長期保有なら、分配金利回りが3%台なものの基準価額の上昇に期待できるVYM。→VYMは銘柄分散効果が高く、安定した増配にも期待できる。

・配当利回りは「1株あたりの配当金÷株価」なので、分子の配当金が上がらなくても分母の株価が下がると配当利回りは上昇してしまう。その点、連続増配株なら、業績もいいので株価も上昇しやすくなる。

・連続増配にフォーカスしたETFは、VIG。VYMとVIGを比較すると、投資後すぐに高い分配金利回りを得たいならVYM、長期間保有するなら、VIG。

・高配当株ETFは、金融ショックなどで全体相場が暴落しているときこそ、買い時である。

◯「インデックスが報われない未来」に備える方法

・今後の世界経済は不確実性が高く、どちらに転んでもおかしくない不透明な状況が続く見込み。しつこい物価高とそれを抑え込むための高金利政策が今後も続くようなら、米国経済や米国株、全世界株式の長期的な低迷につながる恐れもある。

・米国株凋落リスクについて

①ロシア、中国の米国ドル離れ…原因はロシア、中国と米国等の西側諸国の政治・経済・軍事的対立。ロシア、中国が米国債の保有比率を減らし、金(ゴールド)の保有残高を増やしている。

②グローバリズムの終焉…中国からの安価な製品の供給がうまくいかなくなり物価高騰が進めば、長期的なインフレが続く可能性がある。

③米ドルの信用問題…米国政府の「債務上限問題」が一時、緊迫化。この危機は、財務責任法案が可決され回避された。しかし、この法案が期限切れとなる2025年1月になれば、再び問題が粉飾する可能性がある。

・米国凋落という最悪のシナリオに備えるには、資産の一部を、金や暗号資産のビットコインとして持っておく。

・金融リテラシーは、コア・サテライト戦略でスキルアップする。

①全体の7割はコア部分として、現金クッションを十分用意した上でインデックスファンドのつみたて投資に回す。

②残り3割はサテライト部分として個別株投資などインデックス運用以外に回す。

◯「世界一安全な資産」米国債でリスクとリターンを"最適化"

・リスク分散が必要…新NISAの弱点は、株式にしか投資できないこと。金融商品の世界では何かが暴落すれば何かが暴騰する。そのカラクリについてよく理解しておくことが必要。ネット証券の課税口座などを活用して、ほかの金融機関にも分散投資しておくべき。

・超高利回りの米国債への投資…リスク分散の対象として、米国債は非常に有望である。米国では物価高を抑え込むために、FRBがハイペースな利上げを続け、政策金利は5%あたりまで引き上げられている。

・債券価格と金利は逆相関…「債券価格が下落すると金利は上昇、債券価格が上昇すると金利は低下」この関係を知っておくことは非常に重要。

金利上昇面では、逆に債券価格が下落してしまうので、債券投資は不利。一方、金利下落局面では、逆に債券価格が上昇するので、債券投資に有利。→債券に投資すべきタイミングは、「金利が上昇してピークを打ったあと、下落に転じる瞬間」。

・米国では高止まりしていたインフレが鈍化。このまま米国の物価高が沈静化して、FRBが利上げを停止し利下げに転じれば、米国の金利もピークアウトする。→そのときこそが、米国債への投資タイミングである。

・米国債券に投資するなら債券ETF…好きな時に売却できて、少数金額でも複数の債券にリスク分散して投資できる。新NISAでは、直接債券に投資はできないが、債券ETFなら成長投資枠で購入できる。

・米ドル資産は外貨建てMMFで運用…ネット証券などで米国株や米国ETFに投資する時は、あらかじめ為替レートが円高に振れたタイミングを狙って日本円を米ドルに両替しておいた方が有利に投資できる。まずは待機資金として米ドルを保有しておき、ベストなタイミングで投資する。その際、「米ドル建てMMF」という一種の投資信託に両替した米ドルをプールしておくとよい。ただし、金利は固定ではなくFRBが決めた政策金利に連動する。

・米国の国債に投資できるETF…BND、AGG、TLT、EDV

・米国債券ETFは絶好の仕込み時…2022年になって米国でインフレが加速し、中央銀行にあたるFRBがハイスピードの利上げを行った為、ほぼ全ての国債の金利が上昇し、逆に債券価格が急落した。このように、金利が上昇している局面では債券価格が下落する。

・現金クッションが既に用意できているなら、資産を増やすためのポートフォリオは、「株式8割・債券2割」程度が妥当。

・債券ETFとS&P500は逆相関…債券と株式の値動きは逆相関の関係になりやすい。株式が好調な時は景気がよく物価も上昇傾向で、金利は上昇。金利と反比例して債券価格は下落する。逆に株式が不調なのは不景気の時。物価は下落傾向になり金利も低下。株式に投資してもリターンが期待できないので、確実に利息収入がもらえる債券に投資する。

・債券投資の為替リスクに注意…外貨建ての金融商品を購入する時は為替変動に関する理解も必要。為替レートが円高トレンドになると、いくらS&P500が上昇していても、為替差損でパフォーマンスが悪化する懸念があります。

・おわりに…投資には付き物です。金融リテラシーを一言で言うなら、「リスクとは何かを知ること」。世の中の多くの人が成功できない理由はリスクを取らないからです。成功する人は"適切な"リスクを取った人です。