「ここが、こーすると痛いの」
と娘は唇を指差して仰った。
お肌プルプルの幼児なので乾燥とは無縁だが、つい先日まで患っていた胃腸炎が影響してか唇が乾燥していたらしい。
おお、これはいい機会と思って
「口べにみたいなお薬あるから、買いに行こう」
とリップクリームというものがこの世にはあるということを教えた。
「口べに」という語にときめいていた。
メンソレータムのピンクのやつを購入。
ベタベタする感じが嫌がるかと思ったけど、リップスティック状の品の持つ「おねえさんっぽさ」の魅力が勝ったらしい。
何かにつけて、唇に塗りたくっていた。
自分も小さいころ、大人っぽいものに憧れたなあ。
その品は今思うと大して「大人なもの」でもないんだけれど。
それに、焦って大人になんかなんなくてもいいのにね、どうして大人に憧れたんだろうね。