今年、3月に亡くなった、

音楽家、坂本龍一さんの本です。

坂本さんは、

2014年に、中咽頭ガンになり、

それは寛解したものの、

2020年に直腸ガンが発覚し、

転移も発見されて、

余命宣告も受けました。


「これからは、「ガンと生きる」ことに

なります。もう少し音楽を作りたいと

思いますので、見守ってください」

というコメントを、発表していたのを、

覚えています。


この本は、

雑誌「新潮」で、連載されたもの、

22年6月から、23年1月までのものを

もとにしたものだそうです。


YMOの頃の坂本さんは、

曲は、覚えてはいますが、

ご本人は、知らなくて、

有名な「戦場のメリークリスマス」も、

あまり印象にはありません。


ただ、私が癌になり、入院中に、

病院にあった雑誌で、

吉永小百合さんと坂本さんの対談を読み、

坂本さんも、ガンサバイバーであり、

放射線治療をした、と知りました。

ちょうど、

私は、放射線治療ではなく、

外科手術を選択したところでしたから、

とても気になる人になりました。

それからは、何かあるたびに

注目してきました。


最近は、神宮外苑の再開発の見直しを、

求めた手紙を、小池知事に出した、

などということが知られていますが、


3.11の震災以降、いろんな復興の

手助けをしたり、( 特に音楽で)

脱原発の運動もされています。


この本の中で印象的なのは、

コロナ禍のことで、


緊急事態宣言の中、

日本から、ニューヨークの自宅に帰り、

昼日中の5番街から、人も車も姿を消した

もぬけの殻の様子に衝撃を受けて、


「世の中が急激に変化する

こういう非常にショックなことは、

忘れてはいけない。

コロナのグローバルな規模の感染爆発は、

人間たちが、過度な経済活動を推し進め、

自然環境を破壊してまで、

地球全体を都市化してしまったことが、

遠因。

経済活動に急ブレーキがかけられた

この光景を、しっかり

記憶しておくべきです。」


と書いています。


また、明治神宮外苑の再開発に

ついての手紙にも、

「目の前の経済的利益のために、先人が

100年をかけて守り育てた貴重な樹々を

犠牲にすべきではありません」

とも。


自然破壊を、とても危惧されていました。


最近の音楽活動では、

是枝監督の「怪物」の音楽を、

担当しています。


坂本さんは、また大変な読書家だった、と

知りました。

特に、永井荷風の「日和下駄」は、

周りの人に読むのを勧めるほどの

愛読書だったとのこと。

大正時代の東京散策記らしいです。

その頃の東京の様子が

好きだったのでしょうか。


愛読書、10冊があげられていますが

中で私が読んだことがあるのは、

夏目漱石の「行人」だけでした。

「荘子」などがあり、

とても私には読めないかな?と思いますが、

せめて、「日和下駄」は、読んでみたいと

思います。


この本の題名の

「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」は、

坂本さんが音楽を担当した

「シェリタリング・スカイ」という映画で、

語られた言葉らしいのですが、


「自分がいつ死ぬか知らないから、

私たちは人生を、尽きせぬ泉であると

思ってしまう。しかし物事は無限回、

起きる訳ではない。満月が昇るのを

見ることは、あと何回あるだろうか?」


というセリフ?を、

その頃はもう直腸癌と闘っていた

坂本さんが呟き、

それがタイトルになったようです。



私は、私と同時期に癌になった、

坂本さんや、つんくさん、北斗晶さん

などを勝手に癌友のように思っていて、

お元気な様子を見ると、良かった!と

思ったりしてきました。


坂本さんが、今度は、直腸癌に、と

知った時も、

また乗り越えられるのでは、と

思っていたのですが。


山本史緒さんの「無人島のふたり」も

そうでしたが、

こういう本は、

読んでいて辛い、と思うこともありますが、

読後は何故か、

励まされたような気分にもなります。

山本史緒さんもそうですが、

坂本龍一さんも、

とても穏やかに最後を迎えられていて、

私も、こんなふうに最後まで、

生きていこう、と思えるのです。


私は、あと何回、

満月を見られるのでしょうか?

そう思うと、この間見た満月、

もっとしっかり眺めて、

心に留めておくんだった!

などと思っています。