小池真理子さんの新刊です。
図書館に予約していたらしいですが、
いつ?なぜ?予約したのかは、
忘れています。
誰かのブログかな?
ただ、帯の
「過ぎてみれば全部どうってことなかった 」
という言葉は、
ちょっとインパクトがありました。
7編の短編集。
小池さんの本は、あまり意識して
読んだことはなくて、
数冊の朧げな記憶では、恋愛小説、という
感じしか覚えてはなかったのですが、
これもやはり全て男女のお話しではあります。
ただ、普通の恋愛のお話ではありません。
夫の、藤田宜永さんを亡くして、
70代になった小池さん。
老い、孤独、病気、死、
そういうものがほとんどの主なテーマに
なっています。
「微笑み」
昔、ほんの一時期、19歳も年下の、
微笑みがとても優しい美大生と恋をした。
最初から覚悟していたとおり、
彼に、年相応の彼女ができたと分かった途端、
自分から別れを告げた。
そして、25年後、
コロナ禍の中、
買い物に来たデパートの多目的ホールで、
彼の初個展が開かれていることを、知った。
65歳で、
また彼と、こんなふうに会うことができる、
という人生のシナリアがあったことに
胸を熱くする。
ワクチンを打っていないと
入場はできない、と言われ、
入り口でウロウロしていたけど、
彼は、気がついてくれる。
「おめでとう。こんなに立派になったのね。
これからのご活躍をお祈りしています。」
それだけを言って帰ったけど、それでいい。
ひと目会えただけでいい。
また必ず会える。百年後か千年後になるかも
しれないけれど、必ず。
そんなシナリオが隠されている。
ただ、マスクで、
あなたのあの優しい美しい微笑みが
見えなかったのが残念でした。
「日暮のあと」
72歳の元童話作家が主人公です。
シングルマザーで産み育てた40代の娘と、
自分の実家で暮らしています。
母親の老いを、辛辣に指摘してくる娘。
毎度毎度「老婆」だの「高齢者」だの、
「そのうち面倒をみなければならなくなる」
だのと、言い立てて、
母親が、昔は曲がりなりにも童話作家
だったことや、人並みに恋愛もしてきた、
などということが、娘の頭の中を
よぎったこともないのは明らかだ。
腹も立つけれど、
老いの先にあるのは、死のみ、ということを、
受け入れて、人生を達観している演技を
することくらいはたやすいことだ。
何食わぬ顔をして生活を営んでいる。
ある日、
庭の枯れ葉の掃除を植木屋に頼むと、
来たのは、髪を、虹色に染めた若者だった。
丁寧に2日もかけて掃除をしてくれたので、
コーヒーでも、と誘って、話していると、
26歳の彼は、64歳の風俗嬢の彼女と
結婚したいのだ、と言うのです。
その彼女は、昔、借金を重ね、一時は、
山手線に飛び込むことも考えたけど、
死ぬ勇気があるならと、歳を偽って、
風俗のドアを叩いた。
堕ちるだけ堕ちたと悲観したし、
悲鳴をあげそうなほど、毎日が孤独だったけど、
懸命に働いて、やがて借金も返せると、
気持ちは、次第に落ち着いてきた。
今は、
「過ぎてみればなんてことなかった、と、
思える。これも歳をとったから。
歳をとることは楽になること、だから
早くおばあさんになりたい」
と、言うのです、と。
彼は、
「それならば早くおばあさんになったらいい、
彼女には楽になってほしいから、
彼女がもっともっとおばあさんに
なるのが楽しみなんです」
と話すのです。
そんな話しを聞き、
主人公は不覚にも泣いてしまう。
自作の絵本を、
彼女へのプレゼントに、と彼に渡して
植木屋の彼を見送ると、
日は傾き、あっという間に沈んでしまう。
そして、
だけど、と
主人公は思います。
日は沈んでも月が昇る。星が瞬く。
そのことを忘れていた、と。
さぁ、娘のために、
豚の角煮を作ろう、と。
小池さんは、今でもとても美しくて、
まだまだ甘い恋愛小説も似合いそうに
思えるのですが、
でも、だからこそ、「老い」に
過剰に反応しているようにも思えます。
「日暮のあと」の主人公など、
まだ72歳で、毎日、死を意識して、
生きている、なんて😅
小池さんが、
大事な人を亡くした後だから、という
こともあるのかもしれません。
歳をとることが、
どうしてこんなに難しくなったのでしょうね。
私の祖母の頃には、
もっと堂々と歳をとっていたように思うけど🤫
まぁ、数が違う、ということと、
家族の形態が変わった、ということが
あるのでしょうけど?
私は、60代というのは、
人生の収穫の時期だと思っていて、
還暦の時などは、
さぁ楽しもう!などと張り切っていたのに、
年金を貰えるようになり(これは良い😜)
高齢者、という枠に入り、
60代も後半に入ってくると
目の前にある「老い」には、
かなり戸惑っています😅
だから本も、高齢者が主人公のものが、
かなり多いのです。
昔から、迷ったり悩んだりすると
本の中に、解決方法や考え方を探す
タイプですから😂
この「日暮のあと」は、
特に、ここにあげた2編などは、
「老い」を何とか肯定したい?というような
意図すら感じてしまうのですが、
でも、まんまとそれに乗せられて、
つい涙ぐんだり、明るい気持ちになったり🤭
私もやっぱり、
「過ぎてしまえばなんてことなかった」
と思うことありますよ🤗
「今、なんて楽なんだろう!」とも🤪
小池さんは、これから
どんな本を書いていくんでしょう?
小池さんの書く「老い」も、読みたいけど、
また、甘い、はたまた、ドロドロの、
恋愛小説も書いてもらいたい、と思います✌️