湊かなえさんの「カケラ」を読んだ時、 

こういうインタビュー形式で、

次々にいろんな人の話を繋げていく書き方は、

有吉佐和子さんの「悪女について」も、

そうだったな、と思い出して、

なんとなくパラパラとめくるつもりが、

やはり読み始めると止められない💦

以前も書きましたが、

有吉佐和子さんの本には、小説の本当の面白さを

教えてもらったように思います。


「悪女について」

ビルから転落死した女実業家、

富小路公子、又は、鈴木君子。

彼女について、

彼女の人生に関わった男女27人への

インタビューという形で、

それぞれの視点からみた彼女を語るという

27章で構成されています。


ただの八百屋の娘の鈴木君子が、

その美貌と、知恵とで

女実業家として成り上がっていく様子は、

以前何度も読んだ時もそうでしたが、

今回も年表を作り、どこでどう、どの人と知り合い、

その人たちをどう騙し、操ってきたのか?

整理してみて、改めて、納得し、感心し、

そしてまた、その人たちが、騙されたことに、

全く気がつかないままだったということなど、

その描写の面白さは、抜群です。

27人の人たちは、

それぞれの立場で、

年代もバラバラで、次々に、その時の彼女について

証言していくので、

読み進めながら、何度も、整理していかなければ、

どうしてそうなっていったのか?が

ちゃんと理解できないのです。

そこにこそ、このお話しの面白さがあるのですが。


そして、そんなふうに、次々と人を騙し、

翻弄してのしあがっていく彼女なのに、

ほとんどの人の中で、

純粋で、控えめで、ささやくような声で話し、

上品な、美しい人と、認識されていて、

また男の人は、誰もが、自分こそを真に愛してくれていた、と思い込んでいて、そこに違和感もなく、

本当にその構成の巧みさに驚かされます。


彼女の母親の証言も、子供二人の証言も

ありますが、

実の親や、子供でさえ、

本当の彼女、というものを捉えていると思えず、

果たして、彼女の本当の姿、思いは、

どこにあったのか?は

わからないままですが、

それだけに、アレコレと考えられて、

上質なミステリーとして読めるのです。


40年も前に書かれた本ですから、

もしかするとドラマ化されているのかも

しれません。

だけど、このお話は、

文字で読んで、それこそ年表を作り、

彼女が成り上がっていく様を、手段を、

想像し、確認していく、そこにこそ面白さがあると

思います。


有吉佐和子さんと曽野綾子さんは、

ちょうど同じ頃に読んでいるのですが、

曽野綾子さんの本は、

深く考えさせられて、私の考え方の基盤にもなったような本たちですが、

有吉佐和子さんの本は、

もうただそのお話に耽溺し、引き込まれ、

おかしな表現ですが、

これが物語を読む、ということなんだと

はじめて思った本でした。

そして、以前、藤原伊織さんの時にも感じましたが、感性は歳をとりませんね。

若い頃面白かったものは、やはり変わりなく

面白い!と思えます。

何度も、何年経っても、そう思える本が、

たくさんあるのは嬉しいことです。

贅沢ですね。