やっと、中山七里さんの本の
読みたかった本命の「護られなかった者たちへ」
を、読むことができました。
やはりとても重くて辛くて、
だけどそれだけに読み応えのある本でした。
「生活保護より少ない給料やから」とか
「生活保護貰った方がマシ違う?」とか
周りでよく聞く言葉です。
決して本心から言ってるわけではなく、
ただ自分の立場の情けなさを
軽く揶揄して言ってるだけなのですが…。
だけど、この本を読むと、決して軽々に
そんなこと言うべきでないと
つくづく思いました。
声の大きい者、強面のする者が、
不正に生活保護を掠め取り、
今日の食費にも事欠くような人たちが、
必要な保護を受けられない。
申請しても却下される。
そして、その不公平を是正するための
福祉保健事務所の職員も、
ひとりの力はあまりに弱くて、及びもつかず、
現状が分かりながらも、どうすることも
できない。
だけど、護られなかった、という怒りは、
目の前に見えた職員に向かってしまう。
それは、確かに間違った方向の、
間違った方法の怒りの表し方なんだけど…。
なんとなく最近の阿部さんの事件の
犯人のことを思い出してしまいました。
どう声をあげたら、
本当に護られるべき人が護られるのか?
大声をあげても、人を攻撃しても、
そういう人たちが、護られる訳ではなく、
たぶんやはり、この犯人のメッセージのように、
すぐ横の人、隣にいる人たちに、
「助けて」と言うことなのだと思います。
この世は、思っているより広く、誰か気にかけてくれる人がいる、それを信じることだろうと思います。
最後、このままでは終わらないだろう、
とは思っていましたが、
それにしてもやはりあまりに意外な展開で、
ミステリとしても、
読み応えがありました。
現実の生活保護や福祉保健事務所の状態が、
この本の有様のようではないことを切に
願います。
護られるべき人が護られる社会で
ありますように。
なかなかそれが難しいので、
次々といろいろな辛い事件が
起きるのでしょうけど…。