藤原伊織さんの本をブログに書くのは
4冊目。
作品は、全部持ってると思っていたのに、
この短編集の「ダナエ」だけ、見当たらず、
ネットで注文しました。
「ダナエ」が、刊行された頃は、
私は藤原さんの熱狂的ファンだったので、
すぐ単行本を買ったはずなのです。
イオリン、というのは、その頃の出版業界での
藤原さんの呼び方で、そんな文章を読んでから、
私もそう呼んでいました。心の中で🤣
今ネットで、古本の文庫本ではありますが、
100円とかで売っていると、
なんとなく複雑な気分です。
15年ぶりぐらいの再読です。
3遍の短篇集ですが、中の「まぼろしの虹」は
あまり覚えがなく、しかも藤原さんのものにしては、
ハードボイルド的なところがなくて、事件もなく、透明な穏やかな感じで、新しい藤原さんをここで改めて発見したような思いでした。
表題作の「ダナエ」は、
これは、まさにイオリンらしいお話です。
主人公は、画家。
画廊のギャラリーに出していた作品が、
若い女の子によって、突然切り裂かれ、硫酸がかけられる、という事件がおきる。
過去に「ダナエ」という作品が、同じ方法で損傷された事件があり、そのダナエにまつわるギリシャ神話と関係があるのか?
その若い女の子は、誰なのか?
最終の標的は、誰なのか?
今は静かに暮らす主人公の過去から
思いがけない真実が浮かび上がってきて…。
まさにイオリン独特のワクワクの面白さ。
物語の構成もですが、
私は、中の、会話の洒脱さがとても好きです。
それは、どの作品でもそうで、
私が藤原さんの作品に惹かれる大きな理由でもあります。
藤原伊織さんのものを読み返すたび、やはり、
今まだ生きて書いていてもらえたら、と
亡くなったことをいつもつくづく残念に思います。
作品の主人公そのままの、酒呑みの博打好きの、
破天荒な人だったらしいけど、今、生きているなら
70代前半。
この本は、癌の闘病中に書かれたものらしいですが、
もしその癌を克服できていたら、
その後のイオリンが、どんなものを書いたのか?
本当に知りたかった!読みたかった!
と思います。