図書館で、はじめて見た本。
喜んで借りてきました。
主人公は、65歳の男性。
定年退職の送別会の後、
地下鉄のなかで倒れて、そのまま
集中治療室で意識不明の状態にいる。
主人公は、
定年前は、大手企業の役員だったけど
65年前のクリスマスの日に
地下鉄の中に捨てられた捨て子。
名前も、誕生日もわからなかったので
推定の誕生日と、
その時の篤志家の苗字と
活躍していた野球選手の名前がつけられた。
施設で育ち、高校からは、新聞配達店に住み込みで働き、奨学金を受けて大学に進んだ。
誰にも、妻や娘にさえ、自分の過去は
ほとんど話していない。
同期入社の出世頭、社長になった友達や
同じ施設で育った幼馴染
娘婿
毎朝同じ電車に乗り合わせていた看護師
妻と娘
みんなが、回復を願う中で
主人公は、次々と不思議な夢?をみる。
突然自分のベッドの横に現れた
80歳の老婦人とレストランで食事をし、
好物ばかりを食べさせてもらい
「あなたはがんばった」
という言葉も素直に聞くことができる。
次は、海辺で60歳くらいの女性と
自分も45歳の頃に若返っており、
その女性に言われて
その頃のただただ仕事だけをしていた自分と
4歳で亡くした息子、
それからの夫婦の修羅場も思い出していく。
そして地下鉄で、
23歳のサラリーマンになったばかりの
自分と、30代後半の女性と、
もうその頃には、
過去に帰っているんだと気がついているけど、
今まで大変だっただろう?と尋ねられ、
誰にも言うように、そんなことはない、
と言い返そうとしながら
突然、叩かれた子供のように泣いてしまう。
19歳の自分と30代半ばの女性
誰にも話したことのない夢を話す
「大学を出てサラリーマンになって結婚して家を建てて子供を育てたい」
その時の自分にとっては、その夢が叶うことは
誰のどんな夢より難しかったはずだけど、
その人は、
「君ならできるわ」と言ってくれる。
そして、1951年のクリスマスイブ
地下鉄の中で、
15歳の少女が抱いている赤ん坊。
二人共が生きるために、
少女は、赤ん坊を、地下鉄の中に捨てる。
赤ん坊を見つけたみんなの言葉
「大丈夫よ、だいじょぶ」
「みんながついてるよ、人生はこれから」
「君には生きる権利がある」
「メリークリスマス」
「God bless you」
多くの人々の祝福を一身にうけて、
僕は、地下鉄から生まれた。
そして、見知らぬ乗客や、駅員や、地下鉄の
エールの声に励まされ、65年をまっしぐらに生きてきた。
そして、僕は、もう一度、
地下鉄から生まれる。
いつもの通りの浅田次郎さんの書く
切なくて温かくて
笑ったり泣いたりのお話し。
充分堪能しました。