★抗がん剤、新投与法クロノテラピー 「夜、ゆっくり」で副作用抑制 | きじとら☆茶とら+はちわれ

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うちの猫達と他所の猫達のことなどあれこれ書いてます。
※不妊治療は限定記事にしています。

追記です。

夜の9時から抗がん剤治療するのが一番いいのかな??

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体内時計、がん予防・治療に ― 増殖時間に薬投与し効果

人間の細胞には約24時間の時を刻む体内時計がある。
この時計を制御する遺伝子に狂いが生じると、がんになりやすいとされる。
山口大学と佐賀大学は体内時計の乱れを簡単に測定する方法を開発、がんの予防や治療に役立てる道を開いた。
九州大学はがん細胞の増殖に関わるたんぱく質に着目した治療法の開発を進める。
体内時計を利用した時間治療はがんの予防や治療に新境地を拓(ひら)く可能性を秘める。
「1週間ごとに早番と遅番を繰り返す労働者の体内時計を調べたら、常に時差ぼけの状態になっていることがわかりました」。
山口大学の明石真教授らは、ある工場で昼夜交代で働く労働者の体内時計の状態を調べ、こんな結果を得た。
 
体内時計の状態を測定するため、頭髪の根元にある細胞を薬剤で溶かし、時計遺伝子の活動状況の指標になるメッセンジャーRNA(リボ核酸)の量を測る方法を開発。
早番と夜番を1週間ごとに繰り返す人の体内時計のリズムを調べた。
起床時間は約7時間早くなったり遅くなったりしていたのに対し、時計遺伝子の活動が最も活発になるピークは2時間程度しか前後に変化していなかった。
 
交代勤務労働者などはがんになるリスクが高いという研究報告があるが、明石教授は「体内時計のリズムの乱れが原因であることが示唆される。
体内時計を測定して時差ぼけにならないような交代制を組めば、がんになるリスクを低くできる」という。
 
がん細胞が時間によってどう変わるかに注目した研究も進む。
九州大学大学院薬学研究院の大戸茂弘教授らは、がん細胞の増殖にかかわるトランスフェリン受容体と呼ぶたんぱく質に約24時間のリズムがあり、c-mycというがん遺伝子が制御していることを突き止めた。
 
結腸がんの細胞をネズミに移植してトランスフェリン受容体ががん細胞の表面に現れる量を測定したところ、夜の9時に最も多く現れることがわかった。
大戸教授は「時計遺伝子に異常が起きて、がん遺伝子を目覚めさせ、トランスフェリン受容体が多く作られるようになるのではないか」と推測する。
 
大戸教授らは、トランスフェリン受容体ががん細胞の表面で増えたり減ったりするリズムを指標にしたクロノドラッグデリバリー(時間薬物送達)システムという新しい抗がん剤の治療法を開発した。
 
抗がん剤を脂質の膜で球状に包み込み、その表面にトランスフェリンをくっつけた薬剤を、午後9時にネズミに投与したところ、午前9時に投与したネズミより、がんの大きさが3割程度小さくなっていた。
薬剤のがん細胞への取り込み量も午後9時に投与したネズミの方が多かった。
「今後も動物実験を重ねて、時間薬物送達システムを使ったがん治療につなげたい」と大戸教授は話す。
 
がんの時間治療をすでに始めた病院もある。
横浜市立大学医学部付属病院では、がん細胞と正常細胞が増殖し始める時間のずれを利用した時間治療に取り組む。
対象は進行性の大腸がんでがんが肝臓に転移し、手術できないほど大きくなった患者に限られる。
 
太ももの動脈に細い管を入れて、肝臓に直接、抗がん剤を投与する。
がん細胞が活発に活動し始める午後10時から5―FUとアイソボリンという2種類の抗がん剤の投与を始め、午前4時に投与量が最も多くなるようにし、午前10時まで肝臓に注入する。
午後4時には別の抗がん剤シスプラチンを入れる。
 
「正常細胞への影響が少なく副作用がほとんど出ないので抗がん剤の量を5日間で1.5倍に増やせ、切除可能な大きさまでがんを小さくできる」と同大医学部の田中邦哉准教授は説明する。
 
横浜市大ではこれまで70人に時間治療を実施。
56人が手術で肝臓のがんを切除することに成功した。
「これまで救えなかったがん患者が、時間治療で救えるようになった意義は大きい」と同大医学部の遠藤格教授は強調する。
 体内時計の研究が進み、様々な時間薬物送達システムが開発されれば、様々ながんに対して副作用が少なく、より効果的な治療が実現できるようになるかもしれない。
(佐賀支局 西山彰彦)

体内時計 体のすべての細胞に存在 
睡眠や血圧、体温などのリズムを約24時間の周期で制御する仕組み。
リズムを刻む本体は目からの視神経が交差する脳内の視交叉上核にあるとされてきたが、体のすべての細胞にも存在することが最近、明らかになった。
 
体内時計は光によって常にリセットされているが、不規則な生活などにより体内時計に乱れが生じると、睡眠障害や高血圧、糖尿病、がんなどにかかるリスクが高くなるとされる。
体内時計は時計遺伝子が制御する。哺乳類の時計遺伝子は1997年に発見され、これまでBmall 1やPeriod 3など十数種類が見つかっている。

出典 日経新聞・朝刊  2011.2.27
版権 日経新聞社

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抗がん剤、新投与法クロノテラピー 「夜、ゆっくり」で副作用抑制

http://qq.kumanichi.com/medical/2009/04/post-71.php

同じ抗がん剤でも夜から朝までゆっくり投与すると副作用が抑えられ、効果が高い。がんの抗がん剤治療で、体内時計のリズムを生かしたクロノテラピー(時間療法)が注目されている。全国で先進的な医療機関が実践し、県内でも取り組む病院がある。(高本文明)

 抗がん剤は、がん細胞のDNAと結合し、細胞分裂を阻害して効果を発揮する。しかし、正常な細胞も壊してしまい、強い副作用を起こす。正常細胞の分裂・増殖は、昼間に活発で、夜は低下する。一方、がん細胞は夕方から夜寝ているときに盛んになる。

 この特性を利用したのがクロノテラピー。夜間に抗がん剤を投与した方が、がん細胞が抗がん剤を取り込みやすい。正常細胞は休んでいるため、影響を受けにくく、副作用も少ないという。フランスのフランシス・レヴィ医師ら三カ国の共同研究チームが有効性を実証、一九九七年に論文を発表し、世界的に注目された。

 県内では、熊本消化器外科・村本病院(熊本市世安町)が二〇〇三年から実践している。これまでに乳がんの再発、進行した患者八十数人を治療し、実績を挙げている。

 使う抗がん剤は標準治療と同じ。投与する時間帯は午後七時過ぎから翌日午前八~九時ごろまで。胸の皮下に埋め込んだポートと呼ばれる器具に管をつなぎ、抗がん剤をゆっくり点滴で投与する。

 村本一浩理事長は「抗がん剤は標準的な投与量の七、八割で済む。吐き気や白血球の減少など副作用が少なくなり、患者のQOL(生活の質)向上につながった」と話す。

 「一般に抗がん剤は四~六カ月程度しか効果は続かない。しかし、クロノテラピーではほとんどの抗がん剤で一年以上、長いケースでは二年ほど効果が続いた」。抗がん剤が変わるたびに、脱毛などの副作用も新たに起こるが、抗がん剤が長く作用すれば、新たな副作用を避けやすくなる。

 肺にも転移した乳がんと、がん性腹膜炎を来した悪性度の高いスキルス胃がんを併発した患者にクロノテラピーを実施。腫瘍[しゅよう]マーカーの値が激減し、二年二カ月たった現在でも落ち着いた状態という。

 村本理事長らは〇八年、日本癌治療学会で抗がん剤の投与法の違いで効果が得られた症例を報告した。村本理事長は「同じ薬でも使い方を変えれば効果を高められることに注目すべきだ。クロノテラピーの手ごたえは十分感じているが、これまでの症例を詳細に分析し、効果的な手法をさらに検討していきたい」と話している。

●スタッフ不足、診療報酬なく 普及にはなお課題

 クロノテラピーを実践しているのは、横浜市立大病院外科、抗がん剤治療に詳しく都内で診療している平岩正樹医師など全国でも数少ない先進的な医師や医療機関に限られているのが実情だ。

 普及しない背景には、さまざまな要因がある。抗がん剤は毒性が強く、体外に漏れると皮膚が壊死を起こすなどするため、取り扱いには細心の注意が求められる。しかし、夜間に十分な医療スタッフを充てるのが困難な医療機関も多い。

 熊本消化器外科・村本病院(熊本市)は、特殊な皮下埋め込み型ポートを患者に施術した。「薬剤が漏れないように厳重管理を徹底している」と同病院。

 また、抗がん剤治療の専門医は少なく、医療関係者の間でもクロノテラピーはまだ理解されていない。抗がん剤治療自体には診療報酬は付かず、投与方法といった技術に対しても診療報酬はない。外来で行う場合にわずかに加算される程度だ。

 欧米では、抗がん剤の投与量や投与速度を調節できる特殊なポンプが普及しているが、日本では未承認という。

 国内では、新薬の開発には莫大な予算や人材が投じられるものの、いったん開発されれば、別の新薬開発に力が注がれるのが現状。「薬の効果的な使い方の研究開発が軽視されている」という指摘もある。

(熊本日日新聞2009年4月3日付朝刊)