「翔君は・・・
記憶がないんだ。」
「え?」
「過去の記憶が・・・
ないんだよ。」
そう言って皆上さんを見る昴流さんの目はどこか悲しそうだった。
「翔君は・・・
悟の前ではよく笑うんだよ。」
演奏が終わった皆上さんは・・・
城井さんを見つけると駆け寄って・・・
そして笑顔を見せた。
「でも、悟がいないと不安になることが多くてね。
特に雨の日と高い所、そして海辺の近くに行くと・・・
悟を探すんだ。」
雨が苦手・・・
それは過去の葉山を同じ・・・。
「その不安を取り除いてやりたい、悟はその為に・・・翔君の過去を知ってる人を探してる。」
彼が葉山なら・・・
葉山だったとしたら・・・
会わせるべき奴は・・・
「崎・・・義一。」
俺は頭の中に浮かんでいた奴の名前に驚いた。