「はじめまして。城井悟と申します。」
ソファーの前、俺に手を差し出した相手は、見た感じ俺より10歳位年上の男性だった。
雑誌で見たことがある。
城井グループの若き社長。
日本では注目されている企業の新社長だ。
医者という異例の経歴の持っていたから記憶に残っていた。
「三洲新と申します。」
そう言って差し出された手を握り返した。
「座ってください。」
城井さんの言葉にソファーに腰掛ける。
院長から君に会いたい人がいると言われたのは2日前だった。
幸いこの週末はゼミも誰かとの約束もなく、院長の知り合いなら医療関係の人間だろうと思い断ることはしなかった。
「医大の5年生ですか。」
「はい。こちらの病院には実習生としてお世話になっています。」
でも・・・
目の前にいるのは実業家。
そんな人がいったい何で俺に・・・。
「昴流、お前働いてるっていうから年齢あわないって思ってたんだぞ。」
「いや・・・おじさんが優秀なドクターだって・・・。」
「ドクターとは言ってないぞ?優秀な子だよ、そう言っただけだ。」
今までの緊張感がどこに行ったのか・・・
突然始まった会話に驚く俺に
「あ、悪い悪い。呼び出しといてって思うよな。」
城井さんはそう言って俺を見て笑った。