「申し訳ありません。ご挨拶が遅れました。私、皆上のマネジャーの安西です。」
翔君を自分の後ろに隠すように立つとそう言って崎義一に名刺を渡した。
「今日は・・・当社の社長とお会いになられているものだとばかり思っておりましたが・・・。」
「そちらには優秀な部下がお伺いしてます。」
そう言って俺の後ろにいる翔君を見た。
「君の演奏、素晴らしかったよ。」
「ありがとうございます。」
翔君はそう言うと、俺の横に並び
「これからも応援してくださいね。」
そう言って笑った。
「これからも・・・か。」
そのまま翔君から目をそらさない崎。
翔君は胸元のネックレスを握りしめ俯くと一歩後ろに下がった。
まずいな、このままじゃ悟が考えたようにパニックに・・・
そう思った時
「翔。」
その声に顔を上げた翔君は
「悟さん。」
笑顔で崎の横を通りすぎ悟の隣に走っていった。
「ごめんな、遅くなって。」
「ちゃんと演奏できたよ、僕。悟さんはちゃんと仕事した?」
「ちゃんとしたから遅くなったんだろ。」
そう言って翔君の頭を撫でる悟を・・・
どこか寂しそな表情で崎は見ていた。