「昴流さん、悟さんちゃんと仕事戻った?」
「大丈夫だよ。凛が連れて行ったから。」
「そっか、よかった。」
リハーサルを終えて楽屋に戻った時には悟さんの姿はなかった。
仕事があるからしょうがない、そう思いながらも・・・
どこか落ち着かなくて僕はネックレスを握りしめた。
「翔君が演奏終わるまでには戻ってくるって言ってたから、大丈夫だよ。ココア入れてくるね。」
昴流さんはそう言って僕の頭をやさしく撫でると楽屋を出て行った。
( この演奏会に翔の事を知ってる人が来るかもしれない。自分を知るチャンスだよ、翔。 )
悟さんがそう言ってこの演奏会を決めたのは3ヶ月前だった。
アメリカでは何度か演奏会を開いたことがあったが、日本に戻ってから本格的な演奏会を開いたことはなかった。
悟さんが大きな会社の社長だと知ったのは1年前の事で・・・
いずれ戻らなければならないと昴流さんや凛さんを僕に会わせてくれた。
日本に戻る頃には2人とは普通に話せるようになって・・・。
新しい友達ができたねと笑う悟さんに笑顔でうなずいた。