「翔、準備は?」
「うん大丈夫だよ。悟さん仕事忙しんでしょ?戻って?」
「これも大切な仕事なんだけどね・・・。」
半年前、いつまで海外で遊んでるんだと言われ日本に戻った。
あの村では医師としての経験を積んだ。
4年間、医学部で学んだ事をいかしたい。
そんなわがままを通してくれた祖父もいい加減見切りをつけろということなんだろう。
今の仕事に医師免許は必要ないからな・・・。
まあ、今の世の中、どこにいても仕事はできるから、会社経営の方はほぼネットからの指示でちゃんと動いていたし問題ないはずだったんだけど・・・。
「翔君、大丈夫。このバカは責任もって凛が会社に連れ戻すから。」
俺の隣で俺の頭を数回たたいてそう言ったのは安西昴流。
幼稚園から一緒の腐れ・・・
いや幼馴染で今じゃ俺の片腕として俺より仕事ができる男だった。
「悟さん、昴流さんがいてくれるから僕は大丈夫だよ?」
「うわー・・・翔ちゃん、そんな事言ったら俺泣いちゃうよ?」
「泣け、今すぐ泣け。泣いても泣かなくてもお前が凛と社に戻ることは変わらないがな。」
昴流は・・・俺には鬼だ。
「悟さん、本当に大丈夫だよ。今日は雨も降ってないし・・・。演奏が終わったらまっすぐマンションまで昴流さんが送ってくれるんだから。」
「わかってるよ。でも・・・。」
そう言って昴流と見る。
「とりあえず翔君、君はリハーサルしておいで。凛、俺が行くまで頼むな。」
「ほーい。」
そう返事したのは高東凛。
こいつも昴流と同じく俺の幼馴染だ。
「じゃあ翔君、行こうか?」
「はい。悟さん行ってきます。仕事がんばってくださいね。」
そう言って翔は控室を出て行った。
「心配なのはわかる。でも・・・。」
「わかってるよ。
わかってるからこそ・・・
翔がパニックにならないように・・・。」
これだけ大々的に宣伝して演奏会を開催すれば・・・
翔を知ってる人が現れてもおかしくはない
だから・・・
「翔を知ってる奴が現れた時にパニックにならないように、俺が傍に・・・。」