「金城、おはようさん。」
「おはよう、待宮。」
朝、荒北の部屋を訪ねたが返事はなかった。
先に行ったのかも知れない、そう思い大学に来たが荒北の自転車がなかった。
電話もよくある留守番を知らせる女性の声しか聞こえず・・・。
大学に来ても姿のない荒北になぜか嫌な感じを覚えた。
「待宮、荒北見なかったか?」
「いや、まだ見とらんなー。あいつ今日も休みか?」
やれやれ、そんな表情で俺を見る待宮。
「朝寄ってこんかったんか?」
「一応寄ったんだが返答がなくてな。」
話しながらラインを送ったらしく
「ラインも既読つかんのお・・・。」
待宮はそう呟いて俺にスマホを見せた。
「倒れとるんやないんか?」
待宮がそう言った時
「おめーらこんなとこでなにやってんの?」
だるそうに歩いてきた荒北が俺らの前で止まった。
「おー生きとったんか。」
「はあ?」
「いや、お前に連絡してもラインしても返事がないから心配していた所だ。」
荒北は目を見てそう言った俺から視線をはずし、一瞬表情を曇らせると
「悪ぃ・・・使いもんになんねんだわ。」
そう言って電源の入っていないスマホをだした。
「風呂で落としてよ。まったく電源入らねーから。」
「あほじゃのー。」
「うるせー。って事で悪ぃんだけど今日も練習休むわ。修理に持ってかねーと。」
「お前、サボりか。」
そう言って待宮が荒北の腕をつかむと小さく体が震えた。
「いきなりつかんでんじゃねーよ。ったくうっせーなー。」
そのまま待宮の手を振りほどき
「じゃあそういうことでよろしくな、金城。」
俺の方を一度も見ることなくその場を後にした。
「おい、荒北。なんじゃあいつは。」
「待宮、俺も今日休むから頼んだ。」
「はあ?」
そう言って立ち尽くす待宮をその場に残し・・・
帰りに荒北を捕まえて何があったのかを聞こう、そう考えていた。