「どうぞ。缶コーヒーしかありませんが。」
そう言った俺に
「お願いします。」
真行寺の母親は土下座をした。
「あ・・・あの・・・
やめてください。」
慌てて膝を突くと真行寺の母親の顔を上げさせる。
「あなたと兼満が・・・そういう関係だと聞きました。」
真行寺の母親は床に座ったままそう言った。
「高2になってよく笑うようになったと思ってました。それまでは私やあの人に気兼ねして、帰省してきても離婚した私達の家を行ったり来たり、気を使って・・・。」
俺、どっちも嫌いじゃないんっすよ。
両親の事をそう言っていた。
「それが高2の夏休み。あの子は本当に幸せそうに笑って『好きな人がいる』と教えてくれました。
それがまさか・・・
同じ高校の男子だなんて知らなくて・・・。
お母さんも応援するなんて・・・
私そんな事言って・・・。」
母親にしてみれば普通に女の子だと思ったんだろう。
いくら男子校とはいえ、麓には共学の学校もあった。
そこの生徒とって考えるのが普通だろう。
「そんなあの子からあなたの事を聞いたのは最近の事でした。一緒に部屋を借りて住むことにしたと。
驚きました。
兼満の口から出てきたのが男の人の名前だったんですから。」