「佐智さん、どういうことですか。」
佐智さんから連絡を貰ってすぐに僕はホテルに戻った。
ロビーに大木さんがいてそのまま佐智さんのいる部屋に案内された。
「衣装合わせが終ったから少し練習しようという事になって・・・
託生君はバイオリンを取りに行ってくると1人で部屋を出たんだ。
でもいくら待っても戻ってこなくて・・・。」
青ざめた顔で佐智さんは震える手を握り締めながらそう言った。
「それで部屋を訪ねたんですが返事がなく・・・。
フロントに連絡して部屋の鍵を開けてもらったら、バイオリンが机の上に。」
バイオリンが部屋に?
「ホテルの中をくまなく探してもらったんですが、何処にも託生さんの姿がなく、赤池さんに連絡をさせていただきました。申し訳ありません。」
大木さんはそう言って頭を下げた。
託生の携帯は電源を切っているのか聞こえるのはアナウンスだけだった。
いったいどこに・・・
そう思った時
「佐智。葉山君の車椅子が見つかった。」
山田さんがそういいながら部屋に入ってきた。