「靖友は誘わなかったのか?」
部室の中から聞こえた新開の声にドアノブにかけた手を止めた。
「ああ・・・。」
俺の名前が出たよな?
何の話をしてるんだ?
そう思って黙って聞いていると
「荒北には・・・2年間充分やってもらったからな。もうあいつばかりを頼るのはやめようと思ってな。」
福ちゃんの答えに目の前が暗くなった。
2年間・・・充分?
何を言ってんだよ、福ちゃん。
「そっか・・・。寿一はこの先も靖友と走っていくんだと思ってたよ。」
新開の問いかけに
「運び屋としてのあいつの仕事はもう終った。」
福ちゃんはそう言った。
あ・・・そうか。
福ちゃんは・・・
俺と同じ大学に行くつもりはないんだ。
「まあ・・・俺は寿一と同じ大学に決めたし、この先は俺が運んでやろうか?箱根の鬼が。」
同じ大学・・・。
新開は福ちゃんと同じ所か・・・。
「・・・それも悪くないかもしれんな。」
そう言って笑う2人の声に・・・
俺はそのまま寮に戻った。
「そっか・・・福ちゃんには俺はもういらねーって事か。」
自転車をそのまま抱えて寮に入る。
「荒北?何してんだ?」
クラスメートの問いかけに
「たまには整備してやんねーとな。」
そんな適当な答えを返して部屋に入った。