「悪いな、葉山。お前まで悪者だよ。」
「僕はかまわないよ。三洲君がそれでいいんだったら。」
葉山・・・
「この選択が正しいのかどうかなんて誰にもわからない。」
顔を上げた俺に
「でも・・・少なくとも真行寺君は・・・」
力強い瞳を向けると
「お母さんの事をこれ以上嫌いになる事はないから。」
そう言った。
「ああ・・・。離婚問題の時にあれだけ悩んだあいつが・・・両親の間を行ったりきたりしてようやく少し落ち着いてきたんだ。」
なのに今真実を告げることは・・・
あいつにとっていい事じゃない。
「大丈夫だよ、三洲君。
きっと・・・きっとそのうちまた一緒にいられる日が来るよ。」
その言葉に首を横に振る。
「あいつが幸せになれるなら・・・
隣にいるのは俺じゃなくてもかまわないんだよ、葉山。
俺は・・・
幸せに笑うあいつが好きなんだ。」
「三洲君・・・。」
だから・・・
ようやく両親の元へ通うようになったあいつに知られてはいけないんだ。
あいつの母親が俺に別れて欲しいと言ってきた事実を・・・。
男子校という孤立した場所で寂しかっただけで・・・
あの子をこれ以上惑わす事は辞めて欲しいと・・・
泣きながら母親が頼んできた事を・・・。