「たくみ、どうした?」
日が傾き始めた城の窓辺。
託生は海を見ていた。
もう戻れない自分の国。
両親にも姉にも会えず、自分は消えていく。
そう思ったら少し怖くて・・・
「ん?」
ギイ王子の腕を無意識につかんでいた。
「どうした?」
託生は何も言わずに首を振るだけ。
ギイ王子は・・・
どうしたら託生が笑ってくれるか、そう考えていた。
日が沈む。
もうすぐ・・・
僕は泡のように消えてしまうんだ。
託生はそう考えて・・・
ギイ王子が部屋からいなくなった隙を見て部屋を後にした。
消えるなら・・・
あの人の知らない所で消えよう。
あの人が気にしないように・・・。
僕の愛したあの人が・・・。