「おはよう、たくみ。よく眠れたか?」
次の日・・・。
先に起きて窓から海を見ていた託生にギイ王子がそう声をかけた。
託生は一礼をしてギイ王子を見た。
「たくみは早起きだな。おー、ここから見える海は綺麗だな。」
そう言って笑う笑顔。
託生は・・・
ポケットに隠したナイフに手を添えてギイ王子を見ていた。
( このナイフで王子の心臓を貫いて、その血を足にかければ・・・託生は人魚に戻れるんだ。 )
利久の言葉を思い出して、託生は首を横に振った。
「たくみ?どうした?」
様子がおかしいと思ったのかそう聞いたギイ王子に託生は笑顔を見せた。
「さて、朝ごはん食べたら街に出かけよう。案内してやるよ。」
託生の頭を撫でるとギイ王子はそう言って部屋を出て行った。
( 日が沈むまであと・・・10時間くらいしかない・・・ )
託生は手にしたナイフを見つめながら・・・
どうするべきか考えていた。