「なあ・・・お前の名前なんて言うんだ?」
ギイ王子にそう聞かれたのはその日の夜だった。
1人じゃ寂しいだろうからと託生と同じ部屋で寝る事にしてくれたギイ王子。
( 僕、託生だよ )
口をパクパクするものの、その声はギイ王子には届かなくて・・・。
「ん・・・だいすけ」
ギイ王子の言葉に首を横に振る託生
「りょうま・・・けいすけ・・・かずき・・・まお・・・」
どれも違うと首を振る託生。
「ん・・・じゃあ後は・・・。」
そう思った時ギイ王子の頭の中に浮かんだのは・・・
「たくみ?」
その言葉に首を大きく縦にふった。
「たくみか。そっか。たくみ、よろしくな。」
ギイ王子はそう言って頭を撫でた。
( だめだよたくみ )
なぜかギイ王子の頭の中にその声が聞こえた。
それはあの海で溺れたギイ王子を助けた時、利久が託生の名前を呼んだ声。
でも、ギイ王子はその事は忘れていた。
助けてくれたのは・・・
あの日目が覚めた時に自分の隣にいた相楽だと思っているから・・・。