帰り道を急ぐ私の視界に、ちょこんと入ってきた小さな影。
自転車を止めると、「ん?」って感じでこっちを見る。
白地にベージュのブチ猫さん、なんとなくご高齢なイメージ。
それに痩せてガリンゴリン。
「どうしたの?そんなに痩せて」
しゃがんで思わず声をかけると、
「ミャアーン」と、返事をしてお座りをする。首輪はしていない。
野良ちゃんか地域猫かな?
ここはマダムのお店の前。
きっとご飯を待っているのだろう。
「この時刻だと、まだお店には戻らないだろうし」
独り言いいながら考え込む私に、その子は『気にしなくていいのよ』と言わんばかりに、「ミャー」と鳴き、テッテッテッと歩いていく。
毛並みはボサボサだし、病づいてる雰囲気だし、ご高齢なら尚更心配だ。
でも、マダムが面倒を見ているのなら、すでに何人もの方々が関わっているはず。私にできるのはいつものようにフードを届けることくらい……。
その中にこの子の好みのフードがあればいいな。
この子に限らず外で暮らしている猫さんにとって、これから訪れる季節はつらいものだろう。
「仔猫はすぐに里親が見つかるけど、大人の猫はなかなか見つからないのよ。仔猫じゃなくても可愛いのにね」
よくマダムはそう言って溜息をついている。
「おばさん、早く来てくれるといいね。私もまた来る。元気でね」
そう声をかけると、「ミャーアン」と返事をしてくれた。人馴れしてるけど一定の距離を置くその子は、なかなか賢い。
次第に影が濃くなる黄昏の中、たたずむその痩せた姿が眼に焼きついて切なかった。
画像はこちらからお借りしました