配当株投資の「奇妙な死」はAIのせい
James Mackintosh によるストーリー
• 2 時間
2026.5.22
S&P500種指数の配当利回りは過去最低水準に迫っており、配当株投資は大いに期待外れの結果となっている。
その原因は人工知能(AI)にある。この新技術の将来性を巡る興奮は、企業に利益を株主への配当ではなく設備投資に再び回すよう促す一方で、遠い将来にしか利益や配当を期待できない銘柄への関心を高めている。
その結果、配当株の最も古典的な選択法、すなわち毎年配当を増やしている安定した配当銘柄を選ぶという手法の3年間のリターンは、S&P500種指数と比べた場合、ドットコム・バブルのピークだった2000年3月以来、最も後れを取っている。
筆者がこの算出に用いたのは、S&P500配当貴族指数だ。同指数には、S&P500種指数の構成銘柄のうち、25年にわたって毎年増配している銘柄のみが組み入れられている。これらの銘柄は、保守的な経営により、景気の浮き沈みにかかわらず株主に現金を生み出せると想定されている。
配当収入を必要としていない投資家は、配当を再投資しているかもしれない。しかし、投資家が配当収入を求めている場合は問題がある。S&P500種指数の配当利回りはたった1%強で、2000年に記録した過去最低水準をほんのわずかに上回っているにすぎない。配当貴族銘柄でさえ、利回りは1.3%にとどまっている。
ここで重要なのは、この手法が高配当株を購入することではないという点に気づくことだ。高配当は、問題を抱えた企業が配当を減らそうとしている兆候であることが多い。この手法は、そうではなく、ゆっくりと着実に投資することでレースに勝つという考えに賭けるものだ。
新型コロナウイルス流行が起きるまで、着実な配当を得る戦略は素晴らしい結果を残していた。ゼロ金利時代になるとハイテク大手が脚光を浴びるようになり、バリュー株など代替投資先のパフォーマンスが大幅に悪化した。しかし、配当貴族指数は着実な配当が再投資される限り、S&P500種指数を何とか上回ることができた。配当の再投資は、証券口座の設定を更新すれば、一般投資家でも自動で行える。
最近はこうした状況ではなくなっている。配当を再投資しても、配当貴族指数のパフォーマンスは18カ月前を辛うじて上回る状態だ。今年の株価上昇率上位20社の半数は、配当を全く支払っていない。この中には、最も優良な2社、半導体メーカーのサンディスクとインテルも含まれる。配当を重視する投資家はAIブームの恩恵を逃している。
投資家にとっての問題は、これが「仕様」なのか、それとも「バグ」なのかだ。
驚くほどの利益を逃すのはつらいが、その戦略が、市場の過熱期の後に起きることが多い急落を避けることにもつながるなら、着実に進む戦略の投資家は満足するかもしれない。ドットコム・バブルの時にまさにこれが起きた。コロナ後のバブルでも、赤字のハイテク企業の株でこれが繰り返された。この時、安定した配当を支払う銘柄が時代遅れとなったが、その後2022年末までには追いついた。
しかしそれ以降、S&P500種指数構成銘柄の株価は猛烈な勢いで上昇したが、手堅い配当銘柄の株価はとてもそうは言えない状況に置かれた。昨年は本当にひどい状況だった。S&P500種指数構成銘柄のトータルリターンが配当分を含めてほぼ18%に達したのに対し、配当貴族銘柄は7.2%にとどまり、10年物米国債を下回った。今年になって状況が改善したが、今月はまた後れを取る形となった。
問題の一端は、配当貴族指数が均等加重で計算されていることだ。だが均等加重のS&P500と比べても、配当貴族指数のリターンはひどい状況と言える。S&P500均等ウェイト指数は、通常の時価総額加重型のS&P500種指数よりもパフォーマンスが悪い。
配当を重視する投資の背景にあるのは、毎年欠かさず配当を出すことを求められる企業では財務規律が重んじられ、経営陣が夢物語にばく大な費用を投じることはない、という考え方だ。大型買収、新本社、最新ブームへの巨額投資などは、経営トップの満足感やニュースの見出しにつながるが、それらは株主の資金を吸い上げるだけで、最終的には期待外れのリターンに終わることが少なくない。
好況・不況にかかわらず配当を支払い続けるという条件が加わることで、この投資手法は、景気サイクルに対して極めて敏感な企業や、技術革新による破壊的な影響を受けやすいセクターを自然と排除することになる。
投資の専門用語で言えば、これは極端な「グロース」株を避け、ウォルマート、コカ・コーラ、そしてS&P500種指数を算出するS&Pグローバルのような「クオリティー」株に投資する手法を指す。通常ならこの戦略はうまくいく。しかし危ういのは、今回は事情が違うかもしれないことだ。
強気派がAI関連銘柄に買いを入れ、25年間の配当実績はおろか、25年の業務実績すらない多くの企業の株価を押し上げてきた。彼らはさらに、スペースX、オープンAI、アンソロピックという、いずれも大規模でほぼ赤字企業による新規株式公開(IPO)を受け入れる構えも見せている。
当然ながら、配当重視の投資家は取り残される。革新的な企業への投資機会を逃すことは痛手だ。そして、多くの人が信じるようにAIが新たな産業革命であることが証明されれば、判断材料として過去の配当実績に目を向ける投資家は、AI革命の先頭に立つこうした新たな企業を見逃すことになる。
もしこれがバブルだとすれば、その波に乗り遅れることこそ堅実な投資家が望むべき「仕様」そのものだ。AIが強気派の期待に応えるものであれば、配当株投資は死に絶えることはないにせよ、さらに深い眠りにつくことになる。
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――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト
大好調の意見
「そして、多くの人が信じるようにAIが新たな産業革命であることが証明されれば、判断材料として過去の配当実績に目を向ける投資家は、AI革命の先頭に立つこうした新たな企業を見逃すことになる。」との指摘は重要であろう。現実的にオープンAIの莫大な資金提供したSBG の昨日からの爆上がりを見ると良い。ただこれが持続するかどうかが問題であるが、今後注目したい。