「脳梗塞」と「心筋梗塞」のリスクが急上昇…健康に気を付けるなら絶対知っておくべき「コレステロールの真実」

永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授) によるストーリー

 • 3 か月 

22024/9/6 

 

 

毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。

 

BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。

『健診結果の読み方』連載第20回

『中性脂肪は恐れなくてもいい⁉…健診のとき知らないとヤバい「動脈硬化で死に至る」意外な項目』より続く

実はコレステロールは一種類だけ

HDLコレステロール(HDL-C)とLDLコレステロール(LDL-C)は、職場健診・特定健診などの必須項目に入っています。これら2つと中性脂肪が高いと「脂質異常症」と言われます。脂質異常症だとしても、すぐに何かの危険が迫っているというわけではありません。

 

しかし動脈硬化が進みやすくなるため、徐々に脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上昇します。

 

HDLコレステロールは「善玉」、LDLコレステロールは「悪玉」、そう憶えているひとも多いことでしょう。もちろんそれでいいのです。悪玉コレステロールは低いほうがよい、善玉コレステロールは高いほうがよい。そこさえ押さえておけば、健康管理のうえで、とくに問題ありません。

 

しかしせっかくなので、もう少し詳しい話をしていきます。

実はコレステロールという物質は化学的には1種類です。HDLやLDLといった区別はありません。善玉も悪玉もなく、すべて同じコレステロール分子なのです。

粒子の比重で分類

前回記事で、中性脂肪はタンパク質などと結合してリポプロテイン(LP)と呼ばれる粒子を形成しているという話をしました。この粒子は複雑な構造をしています。中性脂肪などの塊を核とし、そのまわりをリン脂質(細胞膜などの主要材料)とコレステロールの層が囲い、さらに外側をアポリポプロテインというタンパク質が覆うという、3層構造をしています。

 

ただし大きさや重さが統一されているわけではなく、さまざまなサイズや重さのものが血液中に浮いています。とくに重要なのが比重です。LP粒子の比重は、コレステロールの含有量によって異なっているのです。含有量が少ないと高比重、多いと低比重になります。

 

そして高比重のものをHDL(High Density Lipoprotein)、低比重のものをLDL(Low Density Lipoprotein)と呼んでいます。

 

LDLの比重は水の約1.02~1.06倍、HDLのほうは約1.06~1.20倍で、遠心分離機によって分けることができます。そしてLDL粒子に使われているコレステロールをLDLコレステロール、HDL粒子に使われているものをHDLコレステロールと呼んでいるという、それだけのことなのです。

繰り返しになりますが、LDLコレステロールもHDLコレステロールも、まったく同じコレステロールです。

多すぎても少なすぎても脳卒中に

コレステロールはリン脂質とともに、細胞膜の材料として使われます。また各種ホルモンやビタミンDの原料になったり、脂肪の消化吸収を助ける胆汁酸に使われたりしており、人体になくてはならない物質です。

 

しかしHDLとLDLのバランス(LH比)が崩れると、健康上の問題が生じてきます。とくに脳梗塞や心筋梗塞が問題です。

「脳卒中」という言葉がありますが、これは「脳出血」「脳梗塞」「クモ膜下出血」の3つの病気の総称です。このうち脳出血と脳梗塞が、コレステロールと深く関係しています。

 

コレステロールが不足すると、血管が弱く、破れやすくなります。つまり脳出血を起こしやすくなるのです。戦前から戦後にかけて、日本は食料事情がたいへん悪く、脂肪分の乏しい食事を摂っていたため、脳出血が非常に多かったことが知られています。

 

しかし食料事情が改善されて、脂肪分を豊富に摂れるようになると、日本人の血管も少しずつ丈夫になってきて、脳出血は急速に減りました。代わりに増えてきたのが脳梗塞です。コレステロールが過剰になると、血管が動脈硬化を起こして詰まりやすくなるからです。ついに1990年代に至って脳出血と脳梗塞が逆転し、いまや脳卒中の代表格と言えば脳梗塞という時代になっています。

 

この血管の丈夫さや動脈硬化と、LDL・HDLコレステロールが深く関わっています。とくにLDLコレステロールが過剰でHDLが少ないと、動脈硬化を起こしやすくなり、それが脳梗塞の主な原因であることが明らかになってきました。

 

大好調の意見

 高齢化とともにコレステロールの問題が医師から指摘されて、服薬を進められる。ここで注意したいのは副作用として横紋筋融解の作用を持つものがあるということで、歩行困難になるようです。和田秀樹先生によると少々価が高くても心配するなということであるので、これは信じたい。