中国で「アメリカ人講師」刺傷事件が発生し、習近平の権威が失墜…!経済無策で「落ちた中国」と「排外主義」の不穏な関係

藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー) によるストーリー

 • 7 時間 

2024.6.19 

 

欧米の不信感を高めた「吉林省事件」

中国で発生したアメリカ人大学講師への襲撃事件は、中国の排外主義につながらないか心配だ。

6月10日、中国北東部の吉林省の公園で米アイオワ州コネール・カレッジの講師4人が刺される事件があった。4人の命に別状はなかったが、ロイター通信、BBC、CNN、NHKなど西側主要メディアはこの事件をいち早く報道し、話題となっている。一方で、中国の国営メディアは、事件をほとんど報じていない。

 

BBCは次のように報じている。

〈警察によると、男性がアメリカ人講師らの1人に体をぶつけて刺し、続けて他の3人も刺したという。さらに、助けに入った中国人観光客も負傷させたという。警察は「崔」という姓の男(55)を逮捕した。他の事案とは関連のない単独の事件とみている。中国で外国人が襲撃されるのはまれ〉

 

〈インターネットには、少なくとも3人が地面で血を流している画像などが出回った。だが、中国ではすぐに検閲され、見られなくなったとみられる。中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」では「外国人 吉林」といったキーワードがトレンド入りしたが、11日に同じキーワードで検索しても、まったくヒットしなかった〉

惨劇を誘発する「経済疲弊」

アメリカの国家安全保障担当のジェイク・サリヴァン大統領補佐官は、「米政府が「深い懸念」を抱いている」(BBC)とSNSに投稿。アイオワ州のキム・レイノルズ知事も、米国務省と連絡を取っているとSNSで説明し、米国務省は事件報道を認識しており、「状況を注視している」(ロイター)という。

 

一方、国内の報道を抑え込んだ中国政府は、外務省の林剣副報道局長がコメントを出し、「中国は『世界で最も安全な国の一つ』だとし、『今回のことが他国との関係を損なうことはないと信じている』」(BBC)と述べた。

犯人の崔という男の素性はまだよく分かっていないが、国内経済の困窮の中で生じた悲劇だったのではないか。

実際、中国経済は青息吐息である。

減少の一途の「自動車販売」

中国政府が6月12日に発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.3%上昇した。4ヵ月連続でプラスとなったが、内容がよくない。自動車やスマホなどの耐久消費財の価格の下落が続いており、消費者の節約志向が鮮明になっている。

 

デフレ化の元凶である不動産市場の状況は相変わらずだ。

中国の主要不動産開発企業20社の5月の販売面積は前年比34%の大幅減だった。前月比でも4%増にとどまっており、中国政府が打ち出した「在庫住宅買い取り促進政策」の効果は限定的だったことが明らかになっている。

 

好調だった自動車市場にも異変が生じている。中国乗用車協会が11日に発表した乗用車販売台数は前年比2.2%減の172万台だった。4月の5.8%減に続き2ヵ月連続のマイナスとなった。

「人的交流活性化」のなかで起きた悲劇

こうした苦しい台所事情の中で起きたのが、今回の外国人襲撃事件だった。

一方で、厳しい内需不振のなかで頼みの綱の「輸出」は、拡大している。これに対して、反発を強めるのが欧米であることは、よく知られている。

 

習近平国家主席はアメリカや欧州と激しく対立するなかで、人的交流だけは絶やしたくない思惑があるが、それに水を差したのが今回の事件だった。

中国国内の状況は、排外主義を喚起しやすくなっている。

 

後編「「アメリカ人講師」襲撃事件で火が付いた「世界の中国批判」…!「排外主義」を招いた習近平の「EV大誤算」の一部始終」では、その背景事情を解説し、中国の排外主義が台頭しかねない状況を考えていく。

 

大好調の意見

 「中国国内の状況は、排外主義を喚起しやすくなっている。」とのことである。たまたまの刺傷事件であったのかもしれないが、この記事の指摘が真実であるならば、日本人の中国旅行は一層危険ではないだろうか。

 

中国旅行を遠慮する必要があるかもしれなあい。

 

なお、今回の記事は可能であったが、パソコンが古くなったためか操作中に「待機中」の表示がほとんどの場面で出るようになった。そのため記事の上梓ができにくくなった

ので、今後このブログも控えめにしたいと思います。