サプリの摂りすぎで「腎臓」が壊れる…!命を蝕む「11種類の成分」の実名

週刊現代 によるストーリー

 • 1 か月

2024.6.8

 

『週刊現代』の特集第3章『グルコサミンに話題の「NMN」も…ダマされるな!「飲んでも効かないかもしれないサプリ」の「全リスト」』より続く。

「ネフロン」に負担がかかる

「紅麹問題」がきっかけで、サプリが腎臓をいためることに注目が集まった。しかし、そもそもなぜサプリの摂取が腎臓にダメージを与えるのか。

埼友クリニック外来部長で腎臓専門医の高取優二氏はこう解説する。

 

「腎臓は、血液を濾過して老廃物や余分な水分を尿として体外へ排出する機能を担っています。血液から濾された老廃物が『原尿』となり、その後、尿細管を経て尿として体外に排出されます」

 

問題は、特定の成分を過剰に摂取すると、腎臓に多大な負荷がかかることだ。

「推奨量や腎機能の値を無視し、サプリを摂取し続けていると"過剰"な状態となる恐れがあります。

 

そうなると腎臓の重要な構造の一つであるネフロンに負荷がかかります。ネフロンは血液を濾過して尿をつくるもので、人体に100万個あるとされていますが、加齢とともに数が減っていきます。だいたい40代からネフロンの減少に伴い腎臓の大きさが徐々に萎縮し、緩やかに機能が落ちるのですが、糖尿病や高血圧などの生活習慣病があれば、腎機能はさらに低下します。このうえで一部のサプリを摂取し続けると、加速度的に腎機能が衰えるリスクが生じるのです」

 

具体的にどういったサプリが腎臓にダメージを与えるのか。'23年に韓国の研究機関が成人1万3271人を対象として「どのようなサプリが慢性腎臓病に関連しているのか」を調査した。

 

愛し野内科クリニック院長の岡本卓氏が、その結果について解説する。

「アミノ酸、タンパク質、高麗人参、紅参、植物エキス由来の漢方薬、ベリーのサプリを摂取している人は慢性腎臓病の有病率が高いことが明らかになりました。

 

特にアミノ酸やタンパク質を摂りすぎると、本来は排出すべき毒素である尿素やクレアチニンなどが血液中に蓄積されてしまう。これを放置していると、腎不全の一種である尿毒症に陥るのです」

過剰摂取で腎障害に

ほかにも血中濃度が過剰になると腎障害を起こす成分がある。前出の高取氏が指摘する。

「腎機能が気になる方はカリウムに要注意です。カリウムは青汁やブロッコリー、バナナなどに含まれる重要な栄養素。しかし、腎機能が衰えうまく排出されず血中濃度が高まると、突然死のリスクにつながります」

 

自治医科大学抗加齢医学研究部教授の黒尾誠氏も、カリウムには注意すべきと言う。

「すでに腎機能が落ちている方はカリウムを摂りすぎないほうがいい。血中からカリウムを排出する能力が衰えているため、不整脈などを引き起こす高カリウム血症につながる恐れがあります」

 

カリウムと同じくミネラルの一種である亜鉛やマグネシウムも摂取に注意が必要だ。

たとえば、亜鉛は1日に40mg、マグネシウムは1日に350mgを超えて摂取すると過剰と言える。これを超えて飲んでいる場合は量を減らすか、頻度を減らしたい。

 

「通常であれば、これらのミネラルは腎臓の濾過機能により尿中に排出されます。しかし、腎機能が落ちてしまうと、濾過されずにとどまり、血中濃度が高くなりやすくなってしまいます。この状態で特定の成分だけを凝縮したようなサプリを服用すると、血中濃度が過度に高くなり、たとえばマグネシウムの場合は、嘔吐や低血圧などの症状を引き起こす高マグネシウム血症につながりかねません」(高取氏)

あなたの腎臓を蝕む"リン過剰"

もう一つ気にしておくべき成分がある。リンだ。リンそのものはサプリとして摂取することはないが、ウコンなどにも多く含まれているため、知らず知らずのうちに口にしている可能性がある。

 

「通常の食生活をしていればリンが不足することはなく、むしろ多くの人が"リン過剰"の状態です」と、前出の黒尾氏は指摘する。

とくにいわし、さば、するめ、ハムやソーセージなどの食品はリンの含有量が多いため、日常的にそれらを食べる人はサプリにリンが含まれていないか気にしたい。

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「注意すべきは『骨を丈夫にする』などとうたい、リンが配合されているサプリです。リンは体内のカルシウムと結びつき、『リン酸カルシウム』という歯や骨のもとになる成分を作りますが、水に溶けにくいという欠点がある。そのためリンを過剰に摂取すると、リン酸カルシウムが血中や尿中で結晶となり、血管や腎臓に障害を起こしてしまうのです」(黒尾氏)

 

黒尾氏は「45歳以上の4人に1人程度がリン過剰の影響で腎臓に障害を受けている可能性があるのです」と警鐘を鳴らしている。

 

さらに加齢や病気で腎機能が弱っていると、ネフロン1個当たりが処理しなければならないリンの量が増えてしまう。排出が間に合わないと腎臓でリン酸カルシウムの結晶が出現し、ネフロンを破壊していく。

 

「この悪循環が進んでいくと、いよいよ摂取したリンを尿として排出できなくなって、血中リン濃度が上がってきます。これは慢性腎臓病で末期に見られる症状です。こうなればもう手遅れで、透析治療や腎移植が必要になります。それほどリンの過剰摂取には注意が必要なのです。食事を普通に摂れている中高齢者は、リンをサプリで補充する必要はありません。むしろ害のほうが大きいと言えます」(黒尾氏)

 

腎臓を丈夫に保つためにも、ここで取り上げた11種類のサプリ成分には気をつけたい。

第5章『危険&無意味なものだけではない…「医者が本当に飲んでいるサプリ」を全公開』へ続く。

「週刊現代」2024年4月20日号より

 

大好調の意見

 血液検査や尿検査で異常所見が出たならば心配するべきだが、そうした異常所見が出ていなければ、特に心配しなくてもよいであろうか。いたずらに心配させる週刊誌や書籍には注意したい。