最新科学でここまでわかった!寿命が延びる「具体的な方法」と「効果的な薬の名前」

週刊現代 によるストーリー

 • 3 か月 

2024.5.5.31

 

ギネスブックに載っている「最も長生きした人」は122歳のフランス人女性。彼女は120歳を超えて生きていた唯一の人類だが、100歳オーバーが当たり前になる時代がもう目の前に来ている。

老化細胞を除去する内服薬

老いた体が若返る―これはSFの話ではない。この先10年で現実のものになる近未来の技術だ。実は、人類の平均寿命はこの60年間で30歳近く延びており、さらに寿命を延ばす技術が研究されている。現在、日本人の平均寿命は男性で約81歳、女性で約87歳だが、これが100歳を優に超え、人類のDNAの限界と言われている120歳にまで延びる日が近づいているのだ。

 

老化細胞除去薬の開発を進めている、東京大学医科学研究所所長の中西真教授が解説する。

「人間は50歳頃から病気にかかりやすくなり、老化が進んでいきます。しかし、もしこの病気にかかりやすくなるタイミングを20~30年後ろに延ばすことができれば、健康寿命はもちろん、平均寿命もぐっと延ばすことができる。人体の老化そのものに医学が介入すれば、病気になる人が減り、高齢者の社会保障費の削減も進みます」

 

では、そもそも「老化」とは何なのか。中西氏が続ける。

「老化の大きな要因の一つは、慢性炎症を引き起こす『老化細胞』などが臓器や組織の中に蓄積してしまうことです。慢性炎症とは、長期間継続して起こる炎症を指します。そしてこの慢性炎症は加齢とともに体のあらゆる箇所で起きるようになる。たとえば臓器の中で慢性炎症が起これば、その臓器の機能低下につながります。こうした機能低下に陥っている状態が『老化』というわけです」

 

老化細胞がもたらす慢性炎症は、健全な細胞にも悪影響を及ぼす。まるで一つの腐ったリンゴから、他のリンゴすべてに腐敗が広がるように、老化細胞は周辺の細胞にまで老化を引き起こし、体中を蝕むのだ。

実現する日は近い!?

この老化細胞を除去できれば、理論上は「老化しない体」を手に入れられる。老いは「治療」できるようになるのだ。まさに夢のような話だが、すでに現実のものになりつつある。中西氏がいう。

「私たちの研究で、老化細胞を生き延びさせている『GLS1』という酵素を発見しました。この酵素の働きをブロックするGLS1阻害薬を使えば、老化細胞だけを選択的に除去できると考えられます。

 

実験では、ヒトで言えば70代くらいの老齢マウスに、GLS1阻害薬を投与したところ、加齢に伴って生じる腎機能の低下、肺の線維化、肝臓の炎症などが抑えられ、各臓器の機能が改善しました。マウスも加齢とともに運動能力が低下しますが、このマウスはヒトにたとえれば70代なのに、40~50歳程度まで筋力が改善したのです」

 

マウスの実験だから、とついつい疑ってしまうが、実はこのGLS1阻害薬はすでに内服薬として製剤化されている。米国ではがん患者に対する治験で用いられ、ヒトへの安全性も確認されつつある薬なのだ。

 

「GLS1阻害薬は国内でももう間もなく臨床試験を開始できる可能性があり、一般の方が利用できる日も近いかもしれない。この薬を人類が広く服用し、健康寿命が延びることを期待しています」(中西氏)

自身の免疫力で老化を防ぐ

老化細胞の除去を「ワクチン」という手法で実現した研究者がいる。'21年に「老化細胞除去ワクチン」の開発に成功した順天堂大学大学院医学研究科循環器内科の南野徹教授だ。南野氏が着目したのが血管の老化だ。

 

「老化した血管の内皮細胞の表面にGPNMBというタンパク質(老化抗原)を発見しました。私たちが開発したワクチンは、このGPNMBを標的にしています。ワクチンを投与すると、血管や臓器にたまった老化細胞に対する抗体ができ、白血球などの免疫細胞がそれを異物として認識し攻撃。自身の免疫力で、老化細胞が除去される仕組みです。

 

医学的にはワクチンと言いますが、一般の方が想像するような感染症などの予防的なワクチンというわけではなく、老化抗原だけを免疫の力を使って取り除くものになります」

 

老化細胞の除去というアプローチのほかに「代謝コントロール」という方法で不老長寿を目指す企業がある。東京大学大学院農学生命科学研究科出身の研究者らで立ち上げたバイオテクノロジースタートアップ「TAZ」の創業者、高橋祥子氏が解説する。

 

「私たちは老化細胞の除去に加えて、代謝コントロールによるアプローチで不老長寿を実現しようと研究しています。代謝のコントロールとは、カロリー制限と同じ状況を作ること。カロリー制限をすれば、『長寿遺伝子』ともいわれるサーチュイン遺伝子が活性化され、寿命が延びて健康になります。

 

それだけでなく、カロリー制限をすると『オートファジー(自食作用)』が起こり、細胞内の不要なたんぱく質が分解されたり、有害物質が除去されたりします。

こうしたカロリー制限をしたときに体内で起きる現象を、疑似的に発生させる成分『カロリー制限様物質』の研究が世界的に進んでいて、創薬や食品に応用され始めています」

 

このカロリー制限様物質の代表格が糖尿病の治療薬である「メトホルミン」だ。メトホルミンは、'60年代から糖尿病の治療に使われており、60年以上の使用実績のある薬。日本でも糖尿病治療薬として広く使われている。

「週刊現代」2024年2月17日号より

(後編)ヒトの肌を30歳も若返らせることに成功した「画期的な方法」に続く。

 

大好調の意見

 「メトホルミンは、'60年代から糖尿病の治療に使われており、60年以上の使用実績のある薬。」とのことである。其れならば過去の使用実績に応じて本当に効果があるかある程度証明できるのではないだろうか。

 

長寿への効果がが本当ならば、早くは塩梅してほしいものである。そして少子化時代に着実な対応策として、高齢者がしっかり働くことで社会維持ができる。