「株高は今年11月がピーク」→専門家の予測に「なるほど」と膝を打ちたくなるワケ

生島ヒロシ,岩本さゆみ によるストーリー

 • 5 時間 •
2024.5.31
 

今の時代、多くの人にとって、安心した老後生活には年金だけでは不安という人が多いのではないでしょうか。そこで新NISAなど投資を活用して、積極的にお金を増やしていこうという動きになっていると思います。老後資金を計画的に増やしていくための方法、そして増やした資産寿命を少しでも延ばしていく方法はあるのでしょうか。

 

人生100年時代、「何を」「どう」投資するのが賢いか?生島ヒロシさんと岩本さゆみさんの著書『日本経済 本当はどうなってる?』(青春出版社)から、お答えします。

“日本人投資家”が泣きを見る共通点

岩本 加齢を考えた場合、積極的に運用ができるのは75~80歳前後までではないでしょうか。取引の際のパスワードを記憶する、振込の作業をするにも、そもそも通帳などの保管から始まり、年とともにどうしても心もとなくなることは多くなるかと思います。

 もちろん個人差はあるかとは思いますが、75歳を目途に積極的な運用はやめ、債券などの安定運用にシフトするのがよい気がします。

 ということで、運用に自信があるなら75歳まで年金の支給を繰り下げ、75歳からは年金により軸足を置くようにする、というのが現実的かもしれません。

 

生島 積極的な投資は75歳くらいまでというのが1つの目安なんですね。

 

岩本 銀行の預金金利が単純に3%以上であれば、投資などリスクのあることはせずとも、資産を増やせるわけなんですが、市中金利がゼロ%の日本ではなかなかそれを上回るリターンを求めるのは難しい、という側面もあります。

 

生島 そこでみなさん、海外へと目が向いてしまう。

 

岩本 新NISAでも、オルカン(オールカントリー)と呼ばれる、全世界の株式(うち米国が6割)に国際分散投資できる投資信託などがずいぶんと人気のようですね。ただ、海外への投資では為替リスクが必ず生じますから、最初から為替差益は放棄して、為替をフルヘッジしてリターンだけを取りいくという方法もあるかと思います。為替ヘッジをされない場合は、先にお伝えしたように円安・円高のタイミングに留意していただければと思いますし、為替のオプション取引を使うのも一案です。ただし「ノックアウト付き」など複雑なものは絶対に手を出さず、シンプルなドルを売る権利を買う「ドル・プット・オプション」などの利用が得策と考えます。

相場の世界は「山高ければ、谷深し」

生島 海外ものに投資する場合は、為替リスクに注意ということですが、そのほかに個人が投資を始める時に、どういうことに気をつけたらいいでしょうか? 日経平均もダウ(ダウ・ジョーンズ工業株平均。米国の株式市場の代表的な株価指数)もコロナ禍からの回復期に大きく上昇しました。

 

岩本 相場ですから、永遠の右肩上がりはあり得ず、どこかで調整が入るでしょう。相場の世界で「山高ければ、谷深し」という格言があるのですが、上昇すれば上昇するほど、またその勢いが強ければ強いほど、下落を始めた場合の下落幅にも注意しなければなりません。そうした下落を経てもなお株価が戻ってきて、さらに上昇する、時間とともに企業価値が高まっていく株を見つけ保有する、というのが鉄則でしょう。

 

生島 「山高ければ、谷深し」う~ん、意味深長ですね。

 

岩本 日本株だけに投資をしているので、自分には米国株は関係ないとおっしゃる方もおられるかもしれません。ただ、世界中のあらゆる金融市場は密接につながっています。大量に運用資金を扱う世界中のファンドは、1国だけ、1つの市場だけに投資をしているわけではありません。

 例えば米国の株式市場が急落しても、まだ日本株が高値を維持しているとなれば、米国株での損失を補填するために、まだ利が乗っている日本株を大量売却する、あるいは債券や他の商品を売って損失補填を、ということはよくあることです。その結果、売りが売りを呼んで全世界的な株価の急落やトリプル安(株式・債券・為替の3つの市場すべてで同時に値下がりが発生する状況)が起こります。

 

生島 投資をしている以上、何らかの関わりが出てくる。

 

岩本 はい。

相場の転換点となる政治イベント

生島 なるほど。で、米国株を注視する際のポイントは?

 

岩本 相場の天井や底を当てるのは至難の業ではあるのですが、米国株の1つの特徴として大統領選挙との絡みで見られる「アノマリー」があります。アノマリーというのは経済理論などでは説明することができないけれども、経験則的に見受けられるマーケットの規則性のようなものです。

 

生島 理屈では説明できないけれど、どういうわけか同じような相場の動きになる、という感じでしょうか。

 

岩本 おっしゃる通りです。過去に同じような経緯があり、市場も似通った動きをした場合には、先行きを占うのに1つの参考となりますよね。

 ここでアメリカ大統領選挙とダウ平均の年間急騰率のグラフをご覧ください。1972年から2023年のおよそ半世紀、この間にダウは570ドルから3万7778ドルまで上昇しました。年間上昇率の平均は7.59%となります。

図表:アメリカ大統領選挙とダウ平均の年間急騰率(1972~2023年)

図表:アメリカ大統領選挙とダウ平均の年間急騰率(1972~2023年)© ダイヤモンド・オンライン

 

 そして、ご承知のように、米大統領選は4年に1回となります。そこで選挙のあった年、選挙年プラス1年、選挙年プラス2年、選挙前年の4パターンに分け、それぞれの年間平均上昇率を比べてみました。

 

生島 ずいぶんと差がありますね。

 

岩本 はい。端的に、選挙年プラス2年は上昇率が伸び悩みますが、翌年の選挙前年になると上昇率がアップするという傾向が見受けられます。ちなみに選挙年プラス2年は米国議会の中間選挙の年でもあります。

 

生島 たしかに中間選挙の年の株価はパッとしませんが、翌年がグンと伸びていますね。どうしてこんなことになるんでしょう?

 

岩本 米大統領の任期は最大で2期8年です。選挙前年に株価指数が上昇する背景としては、再選を狙う現職大統領であればなおさらでしょうが、翌年の大統領選挙に向けて景気浮揚に注力するはずで、そうした影響が株価に出ていると言えそうです。

好調な株価は11月の米国大統領選まで…の理由

生島 選挙を控えて株価暴落でもしたら、再選の目はなくなってしまうから、何が何でも株価が落ちるような政策は避けるわけですね。

 

岩本 バイデン大統領の場合は2022年が中間選挙の年でした。22年のダウ平均の年間上昇率は-8%でしたが、選挙を左右するという意味で肝心要の株価は23年から大統領選のある24年秋までとなりますよね。22年はマイナスでも24年の大統領選挙までは何としても株価を引き上げたいとの思惑は働きやすいはずです。

 

 例えば23年年初の世界銀行の「世界経済見通し」を見ても、23年は世界経済が不況局面に追いやられる可能性があるとするなど、23年の年明けは米国経済に対しても悲観的な見方が大勢で、株価上昇の予想をされた方はほとんどいなかったように思います。

 

 ただ、前述の大統領選と株価のアノマリーがありますので、みなさんの総悲観をよそに、23年の株価はそれなりに上昇していくのだろうなとの予想はできたわけです。結果的に23年のダウは年間にして13.7%の上昇、史上最高値の水準で引けました。

 

生島 アノマリー通りだったんですね。

 

岩本 毎回必ずしも当てはまるとは申しませんが、2024年の大統領選挙がある11月の直前まではこの好調な株価を維持したいだろうな、という予測が成り立つわけです。前述の通り、世界の金融市場は緊密につながっています。米国株が好調であれば余裕資金も生まれさらなる投資先を求めて日本株へと流れる部分も増えます。日本株も米株に引きずられて同じような動きとなりそうです。

 

また、これまで成長著しかった中国経済ですが、不動産市況の低迷、政府による規制強化もあり、先行きへの不安がかなりあります。そうした中で、中国人投資家を筆頭にということになりますが、今まで中国へと流れていた投資資金が米国や日本の株や不動産へという流れもあります。

 

生島 となると、株価上昇はマックス2024年の秋口頃まで。その後は下落、というイメージでしょうか?

 

岩本 1つの可能性としてそうしたこともあるかと思っています。ただ、決め打ちする必要はなく、その時が来れば速やかに撤収すればよいと考えます。

 

大好調の意見

生島 となると、株価上昇はマックス2024年の秋口頃まで。その後は下落、というイメージでしょうか?」との発言は意味深であろうか。