「マイナ保険証」今あえて挙げる4つのメリット 賢く利用すれば医療費の削減などお得にも

加藤 梨里 によるストーリー

 • 11 か月

2024,5,26

 

マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」をめぐって、「窓口で医療費の全額を請求される」、「別人の情報が誤ってひも付けされる」などのトラブルが相次いでいます。

【図 表】マイナ保険証を利用した場合の、医療費の自己負担限度額

こうしたデメリットはあるものの、マイナ保険証にはメリットもあります。世論は批判一辺倒ではありますが、本稿ではあえてメリットに目を向けてみましょう。

 

①マイナポイント7500円相当がもらえる

「マイナ保険証」の利用登録をすると、7500円相当のポイントがもらえます。マイナンバーカードの新規作成とキャッシュレス決済で最大5000円、公金受取口座の登録で7500円という施策と合わせると最大で1人2万円分のポイントがもらえるため、マイナンバーカード普及を促進するきっかけにもなりました。

 

ポイントをもらう手続きはマイナンバーカードとスマートフォンなどを用意し、個人ごとの情報が管理される「マイナポータル」サイトの登録画面で行います。

マイナンバーカードを健康保険証として利用するための申込をして、ポイントをもらうためのクレジットカード・電子マネー・コード決済などのうちいずれかを選択すると登録が完了し、後日にポイントが付与されます。登録手続きをするだけで医療機関を受診しなくても、ポイントはもらえます。

 

②医療機関の窓口での医療費が安くなる

受診時にはマイナ保険証を使わずに紙の保険証を使うことも、現在は可能です。紙の健康保険証は2024年秋に廃止される予定ですが、マイナ保険証の登録をしたことで紙の保険証がすぐに無効にはなりません。手持ちの紙の健康保険証は廃止後も経過措置として最長1年間は有効とされる見通しですので、当面は病院などの受診時には紙の保険証を使うか、マイナ保険証を使うかを自分で選ぶことになります。

ただし今年の4月から、マイナンバーカードで本人確認をすると紙の保険証よりも医療費が安くなりました。

 

病院や薬局などの受診時には本人確認のために保険証を提示しますが、マイナ保険証に対応した医療機関では「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」という診療報酬が加算されます。これがマイナンバーカードの利用時には低く設定されていて、初診の場合は3割負担で6円、紙の保険証だと18円になっています。再診時はマイナンバーカードなら本人確認に医療費はかかりませんが、紙の健康保険証だと月に1回6円がかかります。

薬局の調剤でも6カ月に1回は同様の医療費がかかり、マイナンバーカード利用時は3円ですが、紙の保険証だと12円という差がついています。

(出所)厚生労働省ホームページ「マイナンバーカードの健康保険証利用について」

(出所)厚生労働省ホームページ「マイナンバーカードの健康保険証利用について」© 東洋経済オンライン

 

マイナ保険証に対応するカードリーダーなどのシステムが導入されていない医療機関では請求額が上記と異なることがありますが、今年の4月からは医療機関に対してシステム導入が原則義務化されていて、設置や申し込みが済んでいる施設は全国ですでに9割を超えています。

筆者も先日久しぶりに通院したクリニックで紙の保険証を提示したところ、以前はなかった6円が加算され、マイナンバーカードの有無で医療費が変わることを実感しました。

紙とマイナ保険証での医療費の差は年内まで大きく、来年以降は縮小する予定です。来年1月から紙の保険証への加算額が引き下げられ、再診時については負担ゼロになります。それでも、マイナ保険証の方がほぼ負担が少なくなる状況は続く見通しです。

 

マイナ保険証「積極的に推進」岸田総理

③1カ月の医療費が高額になっても上限以上は請求されない

医療費そのものの負担がマイナ保険証の有無で変わるのは、上記のような本人確認時だけですが、医療費が高額になったときの補助にも違いがあります。

公的医療保険制度には、1カ月に自己負担した医療費が所定の限度額を超えないようにする「高額療養費」という補助制度があり、病院などでの請求額が限度額を超えたときには、超えた分が加入している健康保険から戻ってきます。

 

補助を受けるには基本的には書類での申請手続きが必要で、病院などの窓口ではいったん請求額どおりに医療費を支払ってから手続きをして還付してもらうか、あらかじめ「限度額適用認定証」という書類を健康保険や役所で発行してもらってから受診し、病院などでの請求額を限度額までに抑えてもらいます。後者の限度額適用認定証があれば病院などからの請求額が限度額に達するとそれ以上の請求はされなくなり、一時的な立て替えをせずに済みますが、事前に認定証を発行しておく手続きは必要です。

マイナ保険証があれば、限度額適用認定証がなくても1カ月の医療費が限度額を超えたときにはそれ以上の支払いが不要になります。

 

なお医療費の自己負担限度額は年齢と所得に応じて定められています。69歳以下で年収約370万円から770万円の会社員の場合、かかった医療費にもよりますが1カ月の限度額は8万円台~9万円台が目安です。マイナ保険証があれば、都度の手続きをしなくても、1カ月の医療費の窓口負担額がここまでにおさまるということです。

 

(出所)厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

(出所)厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」© 東洋経済オンライン

 

④確定申告の医療費控除が楽になる

高額療養費制度を利用しても医療費が高額になったときには、その年分の所得税や住民税で医療費控除を適用して税負担を抑えることもできます。しかし医療費控除を適用するには確定申告が必要です。

 

ほとんどが年末調整のみで税の申告を済ませている会社員や公務員の人にとってはあまりなじみがないでしょうし、自営業などで毎年確定申告をしている人でも、1年分の医療費の領収書を保管して集計するには手間を要します。面倒なのでこれまで医療費控除を利用したことがない、という人も多いのではないでしょうか。

 

マイナ保険証を利用すると、「マイナポータル」サイト上に、下の画像のように医療費の情報が記録されます。

マイナ保険証

マイナ保険証© 東洋経済オンライン

 

この情報は、所得税の電子申告システム「e-Tax」に連携して確定申告書の作成に活用することができます。医療費控除に必要なデータをマイナポータルから取り込んで自動入力できるので、入力や計算の手間を大幅に削減できます。

確定申告の手続きも、e-Taxとマイナンバーカードを利用するとスマホだけで完結することができます。マイナポータルからの自動入力は医療費のほかふるさと納税や生命保険、地震保険などの情報も可能で、医療費控除以外の控除を適用するためにも使えます(事前に保険会社などとの連携手続きが別途必要です)。

 

年末調整のときに保険会社からの控除証明書を勤務先に提出しそびれてしまったなど、確定申告をすれば税が軽減されるにもかかわらず手続きの煩雑さからそのままになっているケースはよく見られます。マイナポータルを活用すると医療費控除に限らず、ほかの控除を含めて確定申告のハードルが下がり、税の軽減にもつながるかもしれません。

ただしマイナ保険証で取得できるのは保険がきく医療費の情報に限られます。自由診療の医療費や通院のための交通費、ドラッグストアで購入した薬などには医療費控除の対象になるものがありますが、これらの情報や金額は領収書やレシートから自分でまとめる必要があります。

 

ここまでマイナ保険証のメリットについて見てきました。もっとも、現状はマイナンバーカード制度全体の安全性に懸念を抱かざるをえません。紙の保険証廃止後の運用や高齢者や介護を必要とする人のマイナ保険証発行、本人確認手続きの困難さなどが問題視されており、課題は山積しています。

国は対策本部の設置など対応を進めていますが、利便性が先走って安全が損なわれれば絵に描いた餅です。安心してメリットを活用できるか、今後の動向を注視していきましょう。

 

 

大好調の意見

 不思議なことにこれは上手く出来ました。

マイナ保健相はいたるところで提出を聞かれるが、一切ないと答えている。実際にマイナ保健相は作っていないので仕方が無い。

もっと安全で、使いやすい制度にしない限り普及はするまい。