【バフェットが株主総会で語ったこと3】AIの脅威、亡き友、社会貢献

John Dobosz によるストーリー

 • 1 時間 

2024.5.17 

 

【バフェットが株主総会で語ったこと3】AIの脅威、亡き友、社会貢献

【バフェットが株主総会で語ったこと3】AIの脅威、亡き友、社会貢献© Forbes JAPAN 提供

 

本稿は2024年のバークシャー・ハサウェイ株主総会のハイライトを編集したものだ。本シリーズは3部構成であり、第3部となる本稿では、AIが世界に与える影響、昨年11月に亡くなったパートナーのチャーリー・マンガー、そして社会貢献について、バフェットが語った言葉を取り上げる。第1部はこちら、第2部はこちらで読むことができる。

AIが世界に与える影響

──人工知能の出現が投資の世界や人間の生活全体にどのような影響を与えるかについて質問されたバフェットは、AIを原子爆弾の開発に例えた。

バフェット:私はAIについて何も知りませんが、だからといってその存在や重要性などを否定するわけではありません。昨年、私は「核兵器を開発したときに私たちは精霊を瓶から出してしまった」と言いましたが、その精霊は最近ひどい行いをしています。私はその精霊がもつ力をとても恐怖に感じています。そして、その精霊を瓶に戻す方法を私は知りません。AIも似たようなものだと思っています。

 

AIはボトルから出ようとしている最中です。AIは非常に重要なものですが、誰かが精霊を瓶から出すことは避けられないでしょう。将来、私たちはその精霊に出会わなければよかったと思うかもしれないし、その精霊がすばらしいことをして喜ぶかもしれません。当然私はそれを評価できる人間ではありませんし、第二次世界大戦中に、米国にとって絶対に必要で、長期的には実際に人命を救うと思われた2万トンの爆弾の実験を行ったときも、おそらく評価できる人間ではなかったでしょう。

 

エドワード・テラーだったと思いますが、彼はアインシュタインとともに、原爆により大気に引火し、文明が存続できなくなるかもしれないと主張していました。結果的に私たちは精霊を瓶から出すことに決め、当面の目的は達成しましたが、それが将来の社会を変えるかどうかは時が経たなければわかりません。

 

さて、AIに関してですが、最近少し不安になるような経験をしたことがあります。目の前にあるスクリーンに映し出された人物は、私にそっくりで、私の声を持ち、私が着ているような服を着ていました。私の妻も、娘も、それが偽物であるとは見抜けませんでした。そして、その人物は私が絶対に口にしないであろうことを話していました。もし詐欺師が、本人でもわからないような精巧な映像を作り、その映像に写し出された人物、例えばあなたの娘にそっくりな人物が、交通事故を起こしてしまったので5万ドルを送金してほしいと話しかけてくるとすればどうでしょうか。

 

米国の歴史において常に詐欺は存在していました。もし私が詐欺行為に投資することにも興味があるとすれば、非常に興味をそそられることでしょう。それは史上最高の成長産業なのです。もちろん、AIにも良い側面はありますが、核の精霊と同じように、世界がAIをどう扱うかについて、私は何もアドバイスできません。核の精霊について何も理解していない私が思うに、核の精霊にはとてつもなく大きな善をもたらす可能性もあればとてつもなく大きな害をもたらす可能性もあります。ただ、それがどう作用するかは私にはわかりません。

チャーリー・マンガー

──バフェットが最も感情を押し殺しているように見えたのは、若い株主から 「チャーリーともう1日いっしょにいられるとしたら、彼と何をしたいですか?」と質問された時だった。

バフェット:私たちはいつも毎日やっていることに満足するような生活をしていました。つまり、チャーリーは学ぶことが好きだったのです。彼はいろいろなことが好きだったので、私よりずっと知識の幅が広かったわけですが、私は彼ほど幅が広い人間になりたいとは思わなかったし、彼も私ほど狭くなりたいとも思いませんでした。

 

私たちは何事においてもともに楽しむことができました。いっしょにゴルフをしたり、テニスをしたり、何をするにもいっしょでした。失敗についても、他のことと同じくらい、もしくはそれ以上に楽しみました。なぜなら、その失敗から抜け出すために努力に努力を重ねなければならなかったからです。ある意味、10年前に思いついたアイデアがどんどん利益を生んでいくのをただ座って見ているよりも、パートナーとともに巣を抜け出すための穴を掘っているほうが楽しいのです。

 

彼が99歳まで生きるなんて思いもしませんでした。何しろ、彼は徴兵中に無理やりやらされていた運動を除いて、自分の意思で運動をしたこともなければ、食べるものに気を配ったこともないのです。私よりもはるかに、チャーリーは多くの物事に興味を示しましたが、それでもお互いのことを疑ったことは、ただの一度もありませんでした。もし彼ともう1日だけ過ごすことができるのなら、かつてと同じような1日を過ごすでしょうし、もう1日なんて望むことはなかったでしょう。

 

いつ死ぬのか、何日に死ぬのかわからないというのは大きな利点です。チャーリーはいつも、「死ぬ場所を教えてくれ、そうすれば僕はそこに行くことはない」と言っていました。実際のところ、彼は自分の心でどこへでも行きました。彼は自分が99歳になったときの世界に興味があっただけでなく、世界の方も彼に興味を持っていました。みんなチャーリーに会いたがっていたし、チャーリーも喜んで話をしました。そんな人物はダライ・ラマくらいしか思いつきません。それ以外に共通点があったかはわかりませんが、チャーリーは自分の人生を自分の思うように生き、自分の言いたいことをいうことができました。彼は登壇することが大好きだったのです。

 

彼が私に怒ったことも、私が彼に怒ったこともありません。そんなことはしませんでした。遠距離電話の料金が高かった頃でも、彼と電話するのが楽しくて、毎日長時間話していたものです。私たちは学び続けていたし、いっしょに学ぶのが好きでした。そして、長年の間で経験した失敗から何かを学ぶことができ、私たちは少しづつ賢くなっていきました。その点で、彼と私は波長が合っていました。だからこそ、彼が99歳になり、私が93歳になっても、世界は私たちにとってとても興味深い場所だったのです。

 

時々、このような会合で私やチャーリーに「過去2000年の間に生きた人物の中で1人とだけランチができるとしたら、誰と食べたいですか?」と聞かれることがあります。チャーリーは、彼はすべての本を読んだから、私はすでにその人たちに会っているというのです。彼らに会うために、苦労してレストランに行く必要もありません。なぜなら彼は本のページをめくることで、ベンジャミン・フランクリンとも会ったからです。いっしょにランチを食べに行ったりする必要もありませんでした。

 

これは興味深い質問です。なぜなら、本当にやるべきことは、人生最後の1日を誰と過ごしたいのか、そうした人々にどのようにしたら会えるのかと考えるだけではなく、それを明日から始めることだからです。そして、できるだけ多くの時間をその人々と過ごすべきです。人生最後の1日まで待つ必要などありません。その他の人には構わないでおきましょう。

社会貢献

──バフェットは、自分自身のためだけでなく、何千人ものバークシャーの株主のためにも、途方もない額の富を築いてきた。バフェットは自分の富を慈善団体に寄付することを誓い、バークシャーの投資家たちが好意のある目的のために多額の寄付をすることを可能にしてきた。株主総会で流された短い映像では、ルース・ゴッテスマン博士がアルベルト・アインシュタイン医学校の学費を永続的に無料にするために、バークシャーの株式10億ドル分(約1558億円)を寄付したことが紹介されている。

 

バフェット:彼女の保有額は他の株主と比べてゼロが多いかもしれませんが、彼女はバークシャーの株主の原型です。ルース・ゴッテスマンは私たち全員に貢献するためにアルベルト・アインシュタイン医学校に10億ドルを寄付しました。

 

米国全土には多数の巨大企業があり、ウォルマートのウォルトン一族やマイクロソフトのビル・ゲイツのように、一族で巨額の富を築き、その多くを慈善事業に捧げているケースもあります。ですが、なかでもバークシャーが珍しい理由は、地元の慈善団体に1億ドル(約155億円)以上を寄付している人が非常に多いことです。これは全米の上場企業の何倍にもなると思います。

 

数週間前にルースがしたように、50年間持ち続けてきた小さな紙切れを交換し、自分たちも裕福に暮らしている、そして、血縁関係のない株主たちがみな同じような行動をとっているような会社は他にないと思います。彼らは家族をないがしろにしている訳ではありません。しかし、王朝を築きたいと思っているわけでもないのです。多くの人が全米各地で同じような行動を起こしています。

 

そのような株主たちはすでに多くおり、今後も増え続けていくでしょう。もちろん、そのような行動ができるのは、早くからバークシャーに投資してきた家族、祖父や父親の代からバークシャーの一員になった家族に限られるのは確かです。しかし、彼らの生活はとても裕福なものであり、社会貢献のために何かをないがしろにしている訳でもありません。彼らはセカンドハウスを持ち、地域のコミュニティでも有名です。彼らがやっていることは、長年の間に手に入れ、使わずにとっておいた資金を活用することです。彼らは消費を避けてきました。それこそが貯蓄、つまり消費の先送りなのです。

 

何十年も、何十年も、一族の消費を先延ばしにし、その後に何かを成し遂げるという姿を見ると、人間という生き物を信じる心を取り戻せる気がします。そうした社会貢献の結果、150人の人々がさまざまな人生を追求し、才能ある人々が医者になるという夢を実現し、そのために途方もない借金を背負う必要がなくなるかもしれません。

 

他の人々を助けるために立派に生きながら、自分の消費を先延ばしにしてきたという点で、私の知る限り、バークシャーの株主は他に類を見ない株主グループです。長い年月がかかりますが、それは実に大きなものになります。ルースの社会貢献によって生み出された新しいアウトプットは、彼女自身のためではなく、今後何十年、何百年、何千年、何万年と続く人々のためのものだと彼女は話しました。

(forbes.com原文)

 

大好調の意見

 尊敬すべき人物(バフェット)の写真を今回は諸略しないことといたします。彼はまさに賢人です。莫大な有意義のある寄付ができるようになりたいものですが、時間を無駄にし過ぎたようです。