ロシアではなくアメリカこそが「戦争の原因」である…本気でそう考える人々の「世界観」

現代新書編集部 によるストーリー

 • 12 時間 •

2024.5.14

 

なぜ戦争が起きるのか? 地理的条件は世界をどう動かしてきたのか?

「そもそも」「なぜ」から根本的に問いなおす地政学の入門書『戦争の地政学』が重版を重ね、5刷のロングセラーになっている。

地政学の視点から「戦争の構造」を深く読み解いてわかることとは?

NATOこそが戦争の原因を作っていた?

ロシアによるウクライナ侵攻に際して、シカゴ大学の国際政治学者ジョン・ミアシャイマーは注目を集めた人物のひとりだ。

〈彼自身が提唱者である「オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)」の立場からは、NATOの東方拡大は望ましくない、という主張をかねてから行っていたために、侵攻するロシアではなく、アメリカを中心とするNATOこそが戦争の原因を作っていた、とあらためて主張したからである。〉(『戦争の地政学』より)

 

〈だが徹底して19世紀ヨーロッパ国際政治の大国間政治だけをモデルにして、ロシアの勢力圏の存在の認知を訴えるミアシャイマーの議論を、そのまま21世紀の国際社会に導入することは、不可能である。〉(『戦争の地政学』より)

ただ、こうした見方は、ひとつの視点にすぎない。

ウクライナ併合が自然な姿?

では、ほかの見方で、ロシアによるウクライナ侵攻をどう説明するのか。

たとえば、「プーチンの頭脳」とも称されるアレクサンドル・ドゥーギン、その思想とは?

 

〈2022年のロシアのウクライナ侵攻後も、ドゥーギンによって代表される「ユーラシア主義」の思想の影響が取りざたされた。ドゥーギンは、過激なウクライナ併合主義者である。

 

ユーラシア主義の思想によれば、ユーラシア大陸の中央部に、共通の文化的紐帯を持つ共同体が存在する。ユーラシア大陸の中央に、ロシアを中心とする広域政治共同体が存在する。

この信念にしたがうと、中央アジア諸国やコーカサス地方の諸国のみならず、ウクライナのような東欧の旧ソ連圏の諸国は、ロシアを盟主とするユーラシア主義の運動に参加しなければならない。あるいは参加するのが本来の自然な姿だ、ということになる。〉(『戦争の地政学』より)

 

ロシアが、プーチンが考えていること――。

それは、ウクライナが併合されるのが自然である、あるいは、ロシアが生存圏を取り戻そうとしているのにそれを認めないのは不当である、といった世界観である。

 

異なる世界観の衝突は、どのような結末を迎えるのだろうか。 

 

大好調の意見

 馬鹿馬鹿しい妄想でしかないこれらの世界観がなぜ力を持ち実際の行動=戦争を伴いうるのか。間違った思想、観念であることを明白にし、論破して、侵略を予防しなくてはいかない。

 

ところで、案外にプーチン等は、彼のウクライナ侵略が不届きなものとよく承知した上で侵略をしているのかもしれない。だが、そうであろうとなかろうとプーチンを勝たせてはならない。彼には厳罰を与えねばならないのである。

 

なお、日本も過去に「八紘一宇」の思想のもと、日本がアジアや世界の盟主になるべきだとの思想で太平洋戦争を引き起こした経験もある。この問題については、普段から我々も心して対処しなければならないと思われる。