「自分は悪くない」…法廷で開き直った元暴力団員 2人殺傷でも「過剰防衛」とされた事情

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2024.3.26

 

「自分は悪くない」。男性2人を短刀で死傷させたとする殺人と殺人未遂罪に問われた75歳の男は、遺族もいる法廷で淡々とこう述べた。

 

中学生の頃から暴力団と関わりを持ったという男。アパート内の迷惑行為を巡ってトラブルとなり、2人に襲いかかった。「暴力団の思考」を基に弁明した男に対し、大阪地裁が言い渡したのは求刑の懲役24年を大きく下回る懲役13年。何が酌むべき事情と判断されたのか。

 

「やったった」

「わしを誰と思うとるんじゃ」。令和5年3月、大阪府門真市のアパートで菅原勇二被告の声が響いた。自宅アパートの廊下で、男性=当時(51)=を短刀で複数回突き刺して出血性ショックで死亡させたほか、男性住人(71)の部屋にも突入。「殺すぞ、おら」とすごみながら首などを切りつけ、全治約2カ月の重傷を負わせた。

 

被害者の2人は知人同士。アパートでは、ごみが散らかされるなどのトラブルがあり、被告の関与が疑われていた。住人からこの話を聞いた男性が注意しようと被告のもとへ向かい、事件は起きた。事件後、駆け付けた警察官に対し、被告は「やったった。2人、切ったったわ」と述べた。

 

〝自白〟から一転

「いきなり襲われてよく分からない。殺されるという恐ろしさで頭が真っ白になり、気が付いたらアパートの裏に逃げていた」

今年2月21日の初公判。被告は一転して、当時の詳しい記憶がないと訴えた。弁護側は犯人性や責任能力を争うとともに、正当防衛と思い込む「誤想防衛」が成立する状況だったと主張した。

 

こうした主張の背景にあるのが被告の成育歴だ。被告人質問などによると、広島県で生まれ、13歳ごろに「親方」に拾われ、暴力団の道に足を踏み入れた。事件の10年以上前に関係を断ち、タクシー運転手として働いた時期もあったが、精神鑑定した医師は「ヤクザの考え方が染みついている」と指摘した。

 

事件当日、殺害された男性は被告と廊下で鉢合わせると、「こいつか」と言いながら左胸付近を強く突いていた。

医師に対し、当時の心境を「頭にきたんや。鉄砲玉を送ってきたんやぞ」と語った被告。「鉄砲玉」は暴力団の用語で暗殺の実行犯を意味する。男性を住人が送り込んだ「刺客」と認識したのだという。

 

被告人質問では、反撃した記憶がないとした上で「自分は悪くない。なぜ見知らぬ人から襲われなきゃいけないのか」と強調。男性の遺族が厳しい処罰感情を述べた後でも、「(遺族の)気持ちは分かる。でも、(自分は)突然襲われた恐怖が今でもこびりついている」と訴えた。

 

求刑から10年以上減

3月14日の判決公判。求刑懲役24年に対し、懲役13年を選択した大阪地裁は、まず重傷を負った住人に対する殺意を認めず、傷害罪にとどまると判断した。

さらに、殺害された男性が被告の胸を突いただけでなく、被告の部屋の前まで追いかけた可能性も排除できないとして、「極端かつ過剰」ではあるものの「身の危険を感じ、自己を防衛するため」に起きた犯行と認定。「検察官の主張とは大きく異なる前提のもとで量刑を検討する」とした。

 

被告の特性として、数年前から脳梗塞を繰り返し、認知症の手前である「血管性軽度認知障害」だったことに着目した。衝動性を抑える能力が低下しており、「過剰な反撃には、自身の努力ではいかんともしがたい(同障害の)影響がうかがわれる」と言及。刑が減軽される心神耗弱には至らないものの、責任能力の一定程度の低下を認めた。

 

法廷での発言についても、「記憶できた事実を率直に述べており、真摯(しんし)なものと認められる。反省の態度がみられないと評価するのは相当とは思われない」として、被告の不利な事情とはしなかった。

 

約1時間にわたって続いた判決の言い渡し。裁判長の説明が終わると、被告は何かを発言しようとするしぐさも見せたが、裁判長に制止された。被告側は判決を不服として控訴した。(倉持亮)

 

大好調の意見

 ゴミの廃棄を注意しようとした刃物も拳銃もこん棒も所持していない被害者を暗殺者と思い込んで刺殺したと言う加害者が「血管性軽度認知障害」であったからと言って何故旧系より大幅に情状酌量される必要があると言うのだろうか。おかしな判決であろう。