アメリカでEV販売失速、トヨタのHVがテスラのEVを逆転…欧米主導EVシフトが崩壊で見えた、日本一人勝ちの未来

みんかぶマガジン によるストーリー

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2024.3.11 

 

日経平均株価が史上初の4万円を記録し、長く続いたデフレからの脱却が秒読みと言われる日本。日銀総裁は「インフレ状態にある」との見解を示すが、国民は「実感なき最高値」に冷めた視線を送る。

 

だが、今春は2年連続で大幅の賃上げが期待される企業が多く、6月には政府による定額減税もある。GDP(国内総生産)の半分以上を占める個人消費が上向いていけば、我が国が活況を取り戻す好機を迎える。

 

  そんな中、英調査会社JATOによると、米国では直近3四半期連続でHVの販売台数がEVを上回ったという。23年10~12月に至っては、トヨタ自動車の米国でのHVの販売台数が米テスラのEVを逆転した。  経済アナリストの佐藤健太氏は「景気も、病気も『気』(マインド)が重要。日本経済の行方は『トヨタ』が鍵を握る」と見る。

トヨタ自動車が3月期の連結営業利益見通しを前期比80%増に引き上げ

 3月4日、日経平均株価は初めて4万円を突破し、史上最高値を更新した。バブル期だった1989年12月以来の高水準に市場は沸く。株価上昇の原因としては、米国の株高や円安の進行などがあげられているが、日本の企業業績が好調であることも背景にある。幅広い業種で業績が伸びており、トヨタ自動車は2月に2024年3月期の連結営業利益見通しを前期比80%増の4兆9000億円に引き上げた。  

 

経団連の十倉雅和会長は「日本が成長と分配の好循環に動き出したことがなければ資金も流入しない」と説明。その上で「実体経済と株価がピタッと一致しているかと言えば、そうではないところもある。政府や民間企業の頑張り次第だ」との考えを示している。  

 

2023年は30年ぶりの高い賃上げ率となったが、実質賃金は物価上昇に追いつかず前年比2.5%減と1900年以降で最低水準を記録した。だが、今春に2年連続での大幅な賃上げが実施され、6月の定額減税も加われば日本経済が上向いていくとの見方は少なくない。日銀は1月の「経済・物価情勢の展望」の中で、「所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる」との見通しを示している。

 

HEVは「トヨタ1強」

 需要が高まるHEVは、日本の自動車メーカーに強みがある。ホンダもHEVの開発を進めていく方針で、マツダは世界で初めて量産に成功したロータリーエンジン(RE)の開発グループを2月1日付で復活させた。日本勢がEVの成長鈍化に伴い世界市場で勢いを見せる余地は十分にあると言える。 

 

 富士経済が2023年7月に発表した予測によると、HEVの世界市場は2035年に2022年の421万台から1176万台に、PHEVは同276万台から650万台に増加する見通しだ。調査会社マークラインズによると、HEVは主要国での販売台数が2023年に前年比30%増となり、EVを上回る。

 

  1997年に世界初の量産ハイブリッド車として「プリウス」を登場させたトヨタには、豊富な経験とノウハウがある。HEVは「トヨタ1強」といわれ、エンジンとモーターの2つの駆動方式を効果的に使い分けることで低燃費や乗り心地の良さを実現している。環境性能に優れ、米国での販売も勢いを見せる。

米自動車大手ビッグスリーは「日の丸」HEVの躍進に焦っている

 米国のバイデン大統領は2023年4月、二酸化炭素(CO2)の排出量を2026年比で56%削減する排ガス規制案を発表した。EVの新車販売に占める割合は2030年に60%、2032年には67%に達すると見通していたが、EV失速を受けて米自動車大手ビッグスリーはHEV開発に転換する。「日の丸」のHEVが売れている現状に焦りは隠せない。

 

  EVが失速し、日本勢に強みがあるHEVが復活するのは日本経済にとって朗報と言えるだろう。円安による業績好調といった点も否めないが、自動車産業は裾野が広い。政府による猛烈な支援策で日本でも半導体の熱が高まっているが、やはり日本を代表する企業はトヨタだ。その浮沈は人々の「気」にも多大な影響を与える 「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」。トヨタの経営の核と位置づけられる「豊田綱領」には、トヨタグループ創始者である豊田佐吉氏の考えが並ぶ。創業以来受け継がれてきた精神は、変革期をリードし、実体経済への好影響につながるのか。トヨタをはじめとする「日の丸勢」の行方に注目していきたい。

 

トヨタの「今」は決して悪くない

 筆者が注目するのは、ずばり「トヨタ」だ。日本を代表する企業であるだけでなく、世界の自動車業界でトップを走ってきたリーディングカンパニーは、3月1日に上場来高値を更新。日本の企業として初めて時価総額が60兆円を超えている。  

 

なぜ日本経済の浮沈をトヨタが握っているのかと言えば、単に連結で37万人超の従業員を抱えているからではない。その業績の行方が1つの目安になり得るからだ。最新の世界時価総額ランキングを見ると、上位50社に日本企業が入っているのはトヨタだけである。バブル期の1989年はどうだったかと言えば、約30社も見られていた。つまり、トヨタがトップ50から脱落したり、逆に他の日本企業が入ってきたりすれば、そこから日本経済の「今」を知る目安となり得るのだ。

 

先に触れたように、トヨタの「今」は決して悪くない。グループ企業の不正に悩まされるものの、世界で6割のシェアを誇るハイブリッド車(HEV)を中心に好調だ。欧米で電気自動車(EV)の需要は鈍化傾向にあるが、トヨタはHEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCEV)など全方位の戦略を描いてきた。

豊田章男会長「エンジン車は残り続ける」

 急速に成長するEVに注力してきた欧米の自動車メーカーは戦略の見直しを迫られ、市場をリードしてきた米テスラも中国の比亜迪(BYD)にEVの世界販売台数で抜かれた。その一方で、HEVやPHEVの需要は高まりを見せており、高いハイブリッド技術を誇るトヨタをはじめ日本勢が優位となる可能性がある。

 

 「カーボンニュートラルに向けた現実的な手段としてエンジンには、まだまだ役割がある。だからエンジン技術にもっともっと磨きをかけよう。そういうプロジェクトを立ち上げよう」 「この時代にエンジン?逆行しているように聞こえるかもしれませんが、決してそんなことはありません」 

 

 今年1月に開催された「東京オートサロン2024」で、トヨタ自動車の豊田章男会長は新たにエンジン開発プロジェクトを立ち上げると表明した。EC化が進行していったとしても、エンジン車は残り続けると見る「モリゾウ」の見方は明快だ。

 

大好調の意見

 「EC化が進行していったとしても、エンジン車は残り続けると見る「モリゾウ」の見方は明快だ。」との事であるが、固体電池が実用化されればEVが一層進化するように思われるがいかがだろうか。専門家である豊田章夫会長がそんなことを知らぬはずがないので何か事情があるのだろうか。