「不正は“現場の知恵と工夫”だった」ダイハツ現役管理職が告発する「ミライース」“成功体験の罠”「イースができたんやから、もっとできるやろ」と……

「週刊文春」編集部 によるストーリー  • 2 時間

2024.1.15

 

 

〈 《ダイハツ認証不正問題》工場内で自損事故を起こした車を見た上司が「手直しして出荷するわ」と…“ものづくりの最前線”工場で起こっていたこと《現役社員が告発》 〉から続く

 

 昨年12月に発覚した日本を代表する自動車メーカー「ダイハツ工業」で30年以上にわたって行われていた組織的不正。第三者委員会の報告書では、エアバッグの衝撃実験をタイマー作動で誤魔化すなど顧客の命に直結するような悪質なケースまで数多く報告されており、こうした不正が長年、野放しにされ続けてきた。

 

 今回、報告書に記載された不正現場に実際立ち会ったこともあるダイハツの現役管理職A氏が「 週刊文春 」の取材に応じ、社内で何が起きていたのかを証言した。

現場の不正を「知らないはずがない」

 A氏が語る。

「不正が続いていたことは、今回の発覚以前からもちろん知っていました。現在の社長はトヨタ出身ですが、他の役員や幹部はほぼダイハツの生え抜きです。最近の事案はともかく、現場で不正が蔓延っていたことを知らないはずがない。報告書を読んだ社員には、知らぬ存ぜぬを決め込む経営陣に、不信感を口にする者も多くいます」

 

 第三者委員会の報告書では、不正の原因について社員アンケートを行ったところ、「開発スケジュールが過度にタイトになる傾向」「発売時期や開発日程遵守のプレッシャー」が最多の回答になったとしている。この“過度にタイトなスケジュール”が現場で運用されるようになったきっかけとして報告書に記されているのが、2011年に発売した軽自動車「ミライース」の短期開発の成功だった。

不正の長期化を招いた「ミライース」の“成功体験”

「尋常じゃないほど短い開発スパンで開発され、75万円で販売したミライースは大ヒットしました。あれ自体は間違いなく成功体験でした。ただ、この成功がきっかけとなって社内に『イースができたんやから、もっとできるやろ』と更に開発スパンが短くなっていく現象が生まれた。不正が激増しているのも、ミライース以降に開発された車ばかりですから」(同前)

 

 そして、A氏はこう語るのだった。

「正直に言えば、社内では必ずしも『不正=悪いことをしている』というイメージはなかったのではないでしょうか。認証試験の不正についても『部品が間に合わないから代わりの仕組みを作ればいい』と、厳しい開発スパンに間に合わせようとした、むしろ“現場の知恵と工夫”という認識だったと想像します」

 

 一体、ダイハツ社内で何が起きていたのか——。「 週刊文春電子版 」では「《深層レポート》ダイハツ『不正30年』の病根」と題した連載を配信中だ。第4回となる本稿は、現役管理職の告発。不正のきっかけとなった「ミライース」が生んだ嘘のスパイラル、納期に苦しむ現場が手を染めた「性能のドーピング」、不正を不正と認識していなかったという社内事情などについて詳しく報じている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 電子版オリジナル)

 

大好調の意見

「厳しい開発スパンに間に合わせようとした、むしろ“現場の知恵と工夫”という認識だったと想像します」との指摘は、ダイハツの不正に対する正確な表現ではなかろうか。結局のところ根本的な善悪判断が忘れられていたのではなかろうか。もっともなぜそうなったのか、様々な意見がありであろう。