【裏金問題】「安倍元首相は無関係」説を覆す重大証言 「安倍事務所では昔から裏金を『もどし』『還付金』と呼んでいた」

NEWSポストセブン によるストーリー  • 1 時間

2024.1.15

 

 いよいよ議員逮捕にまで発展した安倍派の裏金問題。「安倍晋三・元首相はこの裏金の一件を知った時に激怒して改善を促した」──というのが今、各所で報じられている流れだ。過去を振り返ると、桜を見る会でも森友・加計問題でも、安倍氏が関わってきた問題はおしなべて、「安倍さんは知らなかった」と“免罪”された。この構造にこそ疑惑の「本丸」が隠れている。【前後編の前編。後編から読む】

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トカゲの尻尾切り

 安倍派の裏金事件捜査が急展開を見せている。東京地検特捜部は1月7日に池田佳隆・元文部科学副大臣を逮捕。池田氏は同派からキックバックを受けたパーティー券収入のうちざっと5000万円を政治資金収支報告書に記載していなかったとされ、事件発覚後、「証拠になるものは消せ」と秘書に指示して関係資料を廃棄させていた証拠隠滅の疑いまで浮上している。

 自民党は逮捕当日に大慌てで池田氏を除名処分にしたが、“トカゲの尻尾切り”で逃れられる問題ではない。

 特捜部の捜査は今後、安倍派の複数の議員や中枢幹部に向かい、派閥ぐるみの裏金づくりの解明を進めると見られている。

 

 だが、この事件でなぜか触れられない問題がある。裏金システムの全体像を解明するためには、同派前会長だった安倍氏がどう関与していたかを明らかにすることが欠かせないはずだが、疑惑が明るみに出た当初から、「安倍氏は無関係」という報道がなされてきた。

 

 先鞭をつけたのが元NHK記者で「安倍氏が最も信頼するジャーナリスト」といわれた岩田明子氏だ。夕刊フジのコラムでこう書いた。

 

〈安倍元首相が2021年11月に初めて派閥会長となった後、翌年2月にその状況を知り、「このような方法は問題だ。ただちに直せ」と会計責任者を叱責、2カ月後に改めて事務総長らにクギを刺したという。2022年5月のパーティーではその方針が反映されたものの、2カ月後、安倍氏は凶弾に倒れ、改善されないまま現在に至ったようだ〉(2023年12月12日付)

 安倍氏が派閥会長に就任して初めてキックバックの存在を知り、怒って止めさせようとした──というストーリーだ。

 

 時期に多少の違いはあるが、“安倍嫌い”の朝日新聞もこう報じている。

〈安倍氏は2022年の派閥パーティーを5月に控えた同年4月、還流の取りやめを提案した。(中略。安倍氏の死後)最終的に4月の方針は撤回され、従来通りの裏金としての還流が9月にかけて実施されたという〉(2023年12月23日付)

 いずれも安倍氏は裏金づくりに全く関与しておらず、むしろ是正しようとした“正義の人”という印象さえ植え付ける。

 

 果たしてそうだろうか。

 本誌・週刊ポストは安倍氏の政治活動を支えてきた元事務所関係者から全く別の内容の証言を得た──。

「もどし」と呼んでいた

「安倍事務所では、昔からキックバックの裏金を『もどし』とか、『還付金』と呼んでいました。安倍先生が派閥の会長になるまで知らなかったなんてあり得ません」

 そう語るのは古参の元安倍事務所関係者だ。

 

「パーティー券を売ってノルマ以上であれば、カネをそのまま手元に置いていいというのは、先代(安倍氏の父)の晋太郎先生の時代から続いていた自民党の資金システムそのものなわけです。だから晋三先生も先代の秘書だった時代からよく知っていたはず。

 

私は事務所に入ってすぐ『もどし』のことを知りました。党費のキックバックがもとになっていて、自民党では議員が新たに党員を獲得すると、1人4000円の党費のうち1000円が議員に入る仕組みがある。そこから派生して、党や派閥パーティーなどでカネを集める時には、集めたカネの一部を議員の手元に残していいシステムになっていた。

 

 だから議員も秘書も、それが当たり前の政治資金の集め方だと思っていた。事務所にはパーティー券を売る専門の私設秘書もいたくらい。政治資金規正法はザル法だから、問題になっても収支報告書の訂正で済んできた」

 

 安倍氏は成蹊高校時代に地理研究部で会計担当、成蹊大学時代には運動部の予算配分を調整する体育会本部会計局長を務めるなど、お金には几帳面な性格で知られる。

 元事務所関係者は、事務所の資金は安倍氏が管理していたと証言する。

 

「お金については代議士本人(安倍氏)がしっかり見ていました。金庫番である筆頭秘書と会計担当の女性秘書の2人が経理を担っていましたが、それも、代議士から『今月はこのくらいで』と毎月予算を指示されて、その金額でやりくりしていた。大元は代議士が握っていたわけです。会計担当の女性の仕事は、帳簿の表面上の金額を合わせるという感じでした。だから事務所のパーティーの収支は全部把握していたし、派閥のキックバックの仕組みについても代議士が知らないわけがなかった」

 

 当時の安倍氏の金庫番だった秘書の自宅を訪ねると、夫人が応対し、「本人は退職しているのでお答えすることはないとのことです」と答えた。

 

 なぜ、証言にあるような資金集めが必要だったのだろうか。前出の元事務所関係者はこんな言い方をした。

「大きいのは総裁選でしょう。総裁選は公職選挙法の規制がないこともあって、お金がかかる。一流ホテルに選対本部を構えて、ホテル代から議員や秘書団の飲み食い代まで大変な金額になる。そうした状況に日頃から備えておかなければならなかったわけです」

 

 安倍氏や安倍派だけのことではないとも言う。

「若手議員の頃は選挙のため、入閣適齢期になれば大臣ポストを得るために派閥に上納し、総理・総裁を目指すようになれば総裁選の資金と、昔から自民党の政治にはカネが必要。そういう金権政治の体質が問題なのです」(同前)

 

 安倍氏の父・晋太郎氏の時代から安倍派と安倍家を取材してきた政治ジャーナリスト・野上忠興氏の話も元事務所関係者の証言を裏付ける。

「清和会(安倍派)では、晋太郎氏が会長だった時代にはすでに派閥パーティー券のキックバックが行なわれており、その後も引き継がれてきた。晋三氏は晋太郎氏の秘書としてそのやり方を側で見てきたし、議員になってからも清和会で育ったから、キックバックの仕組みや歴史を誰よりよく知っているはずです」

 

 このような実態があるからこそ、今回の裏金問題では安倍派を中心に数多くの自民党の大物議員の名前が挙がっている。にもかかわらず、「安倍氏だけが知らなかった」という流れができていることこそが、病巣の根深さを示している。

(後編に続く)

※週刊ポスト2024年1月26日号

 

大好調の意見

 本記事の指摘通り、安倍元首相がパー券のキックバックを知らなかったとの岩田明子氏の主張は嘘くさい。検察は疑惑の根幹には手を出さず、歴代事務総長を不起訴で幕閉めするようだ。もはやこうなったら、政権交代をしなくてはの本の政治の浄化は無理な気がしてきたがいかがだろう。頼りない野党であるが、一時的に緊急避難する必要があるかもしれない。