「人生でいちばん苦しい」〈年金25万円・貯蓄3,500万円〉何の心配もない老後を生きる66歳女性がため息を漏らす〈家族をめぐる重荷〉

 

THE GOLD ONLINE によるストーリー

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2025.12.24

 

 

老後不安といえば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「お金」の問題でしょう。年金はいくらもらえるのか、貯蓄は足りるのか――。しかし、一定の年金と十分な貯蓄があっても、「老後がつらい」と感じる人は少なくありません。経済的には安定しているはずなのに、心は晴れない。その背景には、数字では測れない“家族の問題”が横たわっていることがあります。今回は、年金月25万円・貯蓄3,500万円という条件を持ちながら、「人生でいちばん苦しい」と語る66歳女性のケースをみていきます。

「何の心配もない老後」のはずだった

「周りからは、“もう安心だね”って言われるんです。でも、正直に言うと、今がいちばん苦しいですね」

そう話すのは、東京都近郊に暮らす元会社員の久保田恵子さん(仮名・66歳)。大手メーカーで事務職として長年勤務し、60歳で定年退職。現在は月25万円ほど年金を受給し、退職金や貯蓄を含めた金融資産は約3,500万円あります。

「生活費は月20万円もかかりません。一人で暮らす分には、節約しなくてもやっていける。数字だけ見れば、何の不安もない老後だと思います」

 

それでも、恵子さんの表情はどこか曇ったままです。

恵子さんの悩みは、経済的なものではありません。離婚後、別々に暮らしている2人の子どもと、高齢の実母をめぐる問題が、心の重荷になっていました。

長男は40代半ば。非正規雇用が長く、収入は不安定です。次男は正社員として働いているものの、住宅ローンと子育てで余裕がありません。

医療費の立て替え、子どもの学費の一部、引っ越し費用の援助。一つひとつは大きな額ではありませんが、「断れない関係」が続いてきました。

さらに追い打ちをかけているのが、90歳近い母親の存在です。要介護認定はまだ受けていないものの、物忘れが増え、通院の付き添いや日用品の買い出しは、ほぼ恵子さんが担っています。

 

「介護って、始まる前もかなりしんどいんです。“いつか来る”のが分かっているから、気が休まらない」

厚生労働省『令和5年度 介護保険事業状況報告』によると、65歳以上の高齢者(介護保険第1号被保険者)のうち、要支援・要介護認定を受けている人の割合は、年度末時点で全国平均19.4%にのぼります。

お金があるからこそ、逃げ場がない

「もし私が生活に困っていたら、“自分のことで精一杯”って言えたかもしれません。でも、余裕があるから、全部引き受ける役回りになる」

恵子さんはそう語ります。

「老後って、自由になる時間だと思っていました。でも現実は、“家族の調整役”をまだまだ続けなければならない」

年金や貯蓄が十分にあっても、家族関係や役割の偏りが続けば、老後は決して穏やかなものにはなりません。老後の安心とは、資産額だけでなく、「どこまで背負うのか」「どこで手放すのか」を決められているかどうかでも左右されます。

 

「お金の心配はない。でも、心の余裕がない。それが、今の私です」

恵子さんの言葉は、“何の心配もない老後”というイメージが、必ずしも現実を映していないことを静かに物語っていました。

 

大好調の意見

 「お金の心配はない。でも、心の余裕がない。それが、今の私です」だそうであるが、なんというぜいたくな悩みであろうか。毎月の生活費が不足して高齢でも働いている人から見れば「贅沢を言うな。」と言われるであろう。病気で働くこともできない人から見れば、なんという恵まれた生活であるかと羨ましがられること必定だ。考え方を少し変える必要があるのではないだろうか。