「日本のEVを誰が支えるのか」デンソー撤退で露呈したパワー半導体「各自生存」の限界
山田雅彦 によるストーリー
• 50 分
2,026.5.17
最近、自動車部品大手のデンソーが半導体大手ロームに提案していた買収案を撤回し、日本のパワー半導体業界に波紋が広がっている。この事態は、日本企業が置かれた厳しい国際競争環境と内部での「主導権争い」の実態を改めて浮き彫りにしたとの受け止めが広がっている。
ローム買収提案の背景とトヨタの関与
デンソーによる今回のローム買収提案の背景には、トヨタの強い意向が働いていたとみられている。電気自動車への移行と自動運転技術の急速な発展に伴い、半導体の確保は自動車メーカーの生存に直結する課題となっている。外部調達に依存するのではなく、グループ内の技術力と供給能力を内製化しようとするトヨタの戦略的判断がデンソーを動かしたとの分析がある。
外資依存の回避を基本方針とするトヨタは、国内企業の中から比較的規模が小さく、すでに戦略的パートナー関係にあったロームを買収対象として絞り込んだとされる。しかしロームが独自経営の維持を主張し買収提案を拒否したため、デンソーは敵対的買収に踏み切らず提案を取り下げた形となった。
自動車産業と半導体産業の「戦略的論理」の衝突
今回の対立は、自動車業界が持つ「求心力」と半導体業界が持つ「遠心力」の衝突という側面も持つ。トヨタに代表される自動車業界は、中核技術をグループ内に取り込んで差別化を図る求心力型の戦略をとる。
一方、半導体業界は事業規模の拡大が不可欠であり、その過程で総合電機の一部門から独立した専門企業へと分離していく遠心力が生じる。世界の半導体上位10社のうち、総合電機の形態を維持しているのはサムスン電子のみとなっている。こうした産業構造の特性を踏まえれば、トヨタグループがロームを垂直統合しようとした今回の試みは、業界の潮流に逆行するとの指摘もある。
欧州勢の先行と中国勢の価格攻勢という「二重の圧力」
日本のパワー半導体企業は現在、欧州企業の業績優位と中国企業の価格攻勢の間に挟まれている。インフィニオン・テクノロジーズやSTマイクロエレクトロニクスなど欧州勢はすでに総合電機部門から独立した専門企業として積極的な投資を続け、市場の1位、2位を占めている。
そこに中国政府の手厚い補助金を背景に、中国メーカーが大量生産体制を整え価格競争に参入しつつある。かつてのリチウムイオン電池市場と同様に、中国発の供給過剰による単価下落は時間の問題との見方が広がっており、各社が単独での生き残りにこだわるには、グローバル競争の障壁はあまりにも高いといわざるを得ない。
「3社連合」の実現可能性と主導権争い
専門家の間では三菱電機、東芝、ロームによる「3社連合」シナリオが代替案として挙げられているが、実現可能性は限られるとの見方が多い。各社が自社の利益と主導権を優先する「主導権争い」が壁となっている。
かつてのエルピーダメモリやルネサスエレクトロニクスのように、各社が抱えていた不採算事業を統合した連合体の前例はあったが、世界市場での勝利を目指して自発的に結集した例は少ない。特に三菱電機と東芝はすでに300mmウェーハの量産体制をそれぞれ独自に整備しており、製造プロセスの設計最適化に最適な時期をすでに逸した状態にある。日本のパワー半導体業界が内部の対立を克服し、一枚岩の体制を築けなければ、国際競争力の向上は難しいとみられる。
大好調の意見
「日本のパワー半導体業界が内部の対立を克服し、一枚岩の体制を築けなければ、国際競争力の向上は難しいとみられる。」とのことであるが、「国際競争力の向上」を目指して切磋琢磨をやめたらどうせ海外企業から置いてけぼりになるだけではなかろうか。
三社が開発力の向上にどれだけ実効性を保てるかの競争ではなかろうか。