この記事は、穂吉のブログの「2012-08-14 16:23:03」にUPした『日本の神話92. ~第四部 大和~ =第一章 神武天皇=』という記事を再編成してUPしています。
最初のお話し 『日本の神話01』 前回のお話し 『日本の神話91』
神倭伊波礼毘子命様は、高御産巣日之命様の指示に従い、八咫烏後を追うように先へ先へと歩みを進めました。やがて吉野川の下流へ出た時のことです。
流れる川の中で、竹の筌(うけ)を使って魚を獲っている男がおりました。御子は、この男に
『そなたは何者ぞ。』
と尋ねました。
『私は、この辺りを治めている贄持之子(にえもつのこ)と申します。』
そうその男は、礼儀正しく答えました。
どうやら八咫烏は上手に敵を避け、御子に逆らわず従い協力する者の場所へと、導いているようでした。
上空は八咫烏が案内し、ここから先はこの贄持之子の案内でどんどん突き進んでいきました。
すると今度は、尾の生えている人間が、井戸の中から出てきました。よく見ると、その井戸はきらきらと輝いておりました。
御子はまた、
『お前は何者ぞ。』
と、この尾の生えた人物に尋ねました。
『私は、この辺りを治めている井氷鹿(いひか)と申します。』
この者も、恭しく答えました。
そこからはこの井氷鹿の案内で、どんどんと山の中へ入っていきますと、次も又、尾の生えている人間に出くわしたのです。するとこの者は、大きな岩を押し分けて、押し分けた岩の間から、御子の前に姿を現しました。
『お前は何者ぞ。』と御子は尋ねます。
すると、
『私はこの辺りを納めている、岩押分之子(いわおしわくのこ)と申します。天津神の御子様が、この辺りにいらっしゃると聞き、はせ参じました。』
御子は、この地からは岩押分之子の案内により、宇陀(うだ)(奈良県宇陀郡)へと向かっていったのでした。
- 追 記 -
『筌(うけ)』とは、「うえ」とも言いますが、細く割いた竹を編んで作った、魚を採る道具です。
『贄持之子(にえもつのこ)』とは、『神や天皇に食物をささげる者』と云う意味です。
『尾の生えている人間』とは、この辺りに住む者が、冬の寒さをしのぐために、動物の毛皮を尾を切り落とさずに着ていたので、そう見えたのだろうと解釈されることが多いようです。
『井氷鹿(いひか』)は、奈良県吉野郡に『井光』と云う地名が残っています。
『井氷鹿の井戸』も未だに実在するようです。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
おしまい。