「法鉄」の世界 ~「国鉄法」何が書かれていた? ① | いくつ知ってる?法律トリビア【第一法規】

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こんにちは、第一法規「法律トリビア」ブログ編集担当ですカナヘイピスケ

 

法律という切り口から鉄道の世界を探る「法鉄」シリーズ。
 
今回は、JRが明日で発足30周年を迎えるのにちなんで、

JRの前身、国鉄について定めていた法律「日本国有鉄道法」について

見てみましょう。

 


  つながるうさぎ 法鉄記事の一覧はこちら ⇒ 「法鉄」の世界 ~ 記事まとめ つながるうさぎ


 

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「日本国有鉄道法」は、1948(昭和23)年12月20日に公布され、

翌1949(昭和29)年6月1日に施行されました。

そして、38年後の1987(昭和62)年4月1日、

「日本国有鉄道改革法」によって廃止されました。

○国鉄法にはどんな決まりが書かれていた?

ここからは略して「国鉄法」と呼びます。

国鉄法には何が書かれていたのでしょうか。

まずは目次を見て見ましょう。

 日本国有鉄道法(昭和23年法律第256号)〔※現在は廃止〕
  目次
  第一章 総則(第一条―第八条)
  第二章 機関(第九条―第十七条)
  第三章 役員及び職員(第十八条―第三十五条)
  第四章 会計(第三十六条―第五十一条)
  第五章 監督(第五十二条―第五十四条)
  第六章 罰則(第五十五条)
  第七章 雑則(第五十六条―第六十四条)
  附則

これを見ると、

・国鉄という法人を構成する機関、役員・職員に関すること
・国鉄の会計に関すること
・国による国鉄の監督に関すること

などが書かれていた法律だということが分かります。

○国鉄法の目的は何だった?

国鉄法は、38年の間に42回改正されましたが、

今回は、廃止された直前の条文を見てみましょう。

 第1条

   国が国有鉄道事業特別会計をもつて経営している鉄道事業その他一切の事業を経営し、能率的な運営により、これを発展せしめ、もつて公共の福祉を増進することを目的として、ここに日本国有鉄道を設立する。


 第2条

   日本国有鉄道は、公法上の法人とする。日本国有鉄道は、民法〔…略…〕又は〔…略…〕商法〔…略…〕の規定に定める商事会社ではない。


1949年(昭和29年)6月1日に国鉄法が施行されたことによって、

「日本国有鉄道」が設立され、国が経営していた鉄道事業などを

経営することになりました。

 国鉄法の第1条には、

 ・能率的な運営を行い、
 ・国有鉄道の事業を発展させ、
 ・公共の福祉を増進する

という目的が示されていました。

また、第2条には、

 ・国鉄は公法上の法人とする
 ・国鉄は商事会社ではない

と、国鉄という法人の性質について規定されていました。

○裁判にもなった「国鉄のすることは『公』のことなの?」

この「公共の福祉を増進」という言葉や、「公法上の法人」という言葉から、

国鉄の行うことは『公』のことなのだろうか、ということが裁判で争われた事件が

いくつかあります。

例えば、国鉄の所有地を使って商売をしていた人に対して、

国鉄が、その土地を返すように求めたという事例があります。

今回は、そのうち2つをご紹介します。

1つ目は、昭和44年5月20日の

東京地方裁判所の判決(昭和41年(ワ)7007号)です。
 
この事件は、京浜東北線の高架下の土地を使っていた商業組合に対し、

国鉄が、土地を返すように求めたものです。

そこでは、国鉄の土地を貸し借りしているという関係が、

民間の人同士の「賃貸借」と同じなのかどうかが問題になりました。

これについて、判決は、

「〔国鉄〕が国家意思により設立され、その組織や資金上国と密接な関係が

認められるとしても、そのことから〔国鉄〕の対外的資産活動がすべて公法に

よって規制されるものと速断することはできない」

と述べ、民間の人同士の賃貸借と同じであると指摘しました。

2つ目は、昭和44年4月5日の

東京地方裁判所の判決(昭和42年(ワ)2312号)です。

この事件は、東京駅前の広場を使ってガソリンスタンドを経営していた会社に対し、

国鉄が、事業に用地を使うので返すように求めたものです。

ここでも、国鉄の土地を貸し借りしているという関係が、

民間の人同士の「賃貸借」と同じなのかどうかが問題になりました。

 これについて、判決は、

「〔国鉄〕の事業の公共性は従前国が経営していたときと変らない。従って、

〔国鉄〕の所有財産については公共性の立場からその法律関係を

考えなければならない。」

と述べ、民間の人同士の「賃貸借」とは異なるものだと指摘しました。

なかなか難しいものですね。

国鉄法の条文はまだ続きますので、

また回を改めて見ていきたいと思います。

 

※この記事の作成にあたっては、「日本国有鉄道法解説」(日本国有鉄道法

 研究会著、1973年、財団法人交通協力会出版部刊)を参考にさせていただきました。

 


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いかがでしたでしょうか。

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