経営者の覚悟を指針セミナーで問われる | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

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埼玉同友会の今年の「経営指針づくりセミナー」も早いもので、昨日で5講目となり半分が終わりです。基本は月に1回ペースですが、今月は理念づくりに集中するという意味合いもあり、3日に続いて2回目になります。昨日はその「理念編」のまとめとして、受講生それぞれが前に出て成文化した経営理念を発表しました。

 

一人の発表時間は4分ということで、指針セミナーに参加した思いやこの間のセミナーの中で、スタッフや他の受講生とグループ討論する中で得た気づきを前振りとして話し、各自が暫定的にまとめた自社の経営理念を発表します。それに続いて所属するグループからスタッフが受講生の報告をフォローする2分間のコメントを行うのですが、今回はあるスタッフが行った辛口のコメントが秀逸でした。

 

毎回、次回のセミナーに向けて宿題が出されており、今回の発表に向けても事前に記入した経営理念検討表シートの提出を求めていました。当然のことながら、ほとんどの受講生は提出期限を守っているのですが、今回もやはり記入したシートを提出されないまま当日に持参して参加される受講生が12名いたようです。

 

さて、その方の発表の順番が来ました。当然のことながらまとまった理念とは言い難いものです。しかも彼がその理念発表の前段に話されたことは、後継者として覚悟が定まらない悩みでした。大学で学んできたことと違う世界であり馴染めないこと、未だにその仕事に意識が入り込めていないというものでした。ただ曲がりなりにも彼は、この同友会の指針セミナーにやって来て、無理やりであろうと自分で考えた「理念」を発表したのです。

 

そのあとのグループ長をやっているスタッフのコメントによれば、彼は当日も結局、理念の成文化をすることなく白紙のシートを持って来たということでした。朝、セミナーが始まる前にそれを知ったグループ長は、彼を会場の外に連れ出し、コンコンと説教をしたということです。

 

いつまで会社に向き合わないで逃げるつもりなのか。そんなあなたの下で日々働いている社員さんの気持ちを考えたことがあるのか。我々スタッフに対しても失礼だ。経営者としての責任を自覚しないとダメだ。今日は発表の時間をずらしてもらうので、今からでもいいから理念の成文化をして発表をしてください。と詰め寄ったという報告を、本人を前にしてされたのにはビックリしました。

 

会場にも緊張感が走ります。同時に、やっぱりこれが同友会の凄さなんだと感じる場面でもありました。少なくとも彼は、このグループ長の叱責に大きなヒントを得たことは間違いないのです。あと3か月、これから指針セミナー後半戦にも彼がしっかりと参加してくるようであれば、ぜひ最後に昨日の出来事についての感想を聞きたいと思いました。

 

ところで昨日の午後は、SWOT分析の第一弾として外部環境分析の最初の作業をブレーンストーミング形式で行うのですが、その前に玉川大学の長谷川英伸准教授から「中小企業を取り巻く外部環境分析」と題して、国際的な政治や経済の動き、そして国内の主要産業の見通しや景況分析、消費税増税の影響など、盛りだくさんの報告がありました。

 

特に米中の貿易摩擦の影響は、中国に代わる大きな新市場は考えられない状況にあって極めて深刻です。すでに中国向けの電子製品・デバイスが“在庫の積み上がり局面”に入っているということです。長谷川准教授は、こうした日本経済への影響は、必ず自社にも影響してくることを覚悟し、それが、いつ、どのくらいのレベルになるか、予測しながら経営していくことの重要性を強調されていました。

 

またここ最近は米中の関係だけでなく、日本は韓国との関係でも政治が主導する形で、国内経済に厳しい状況を作ってきています。セミナーでも幾つか報告がありましたが、福岡の中州はガラガラになっているとか、九州の観光産業は大きな打撃を受けているようです。

 

なんだかチキンレースのような様相で崖っぷちに向かう先に、いったい何が待っているのか。トランプ流の政治主導による国内経済の混乱に、中小企業の実態をどこまで見ているのか、グローバル化した今の時代、一国のリーダーとしてもっと違うやり方があるでしょう、と言いたい気持ちです。