”しぶこ”に学ぶ | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

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この一週間、先週末の全英女子ゴルフで、樋口久子さん以来42年ぶりに海外メジャー優勝した若干二十歳の渋野日向子プロにくぎ付けです。プロのスポーツ選手として華がある、スター選手らしいスターが日本の女子ゴルフ界に久々に登場したという感じです。まだ一年前にプロになったばかりなのに、今シーズンすでに国内で2勝を挙げての全英ゴルフでした。

 

まさかこうした歴史的な快挙で幕を閉じることになるとは、渋野さん本人を含めて誰も予想していなかったことだろうと思います。試合後のインタビューで「世界のトッププロと優勝争いをして学べたことは何ですか?」という質問に「う~ん、学びに行ったのに・・・優勝しちゃったんで・・・」とハニカミながら応える飾り気のない姿が、また多くのファンの心をわしづかみという感じです。

 

どんなシーンでも笑顔を絶やさないプレースタイルに、海外メディアも注目して「スマイルシンデレラ」とニックネームが付けられたようです。でも日本のメディアの取材ですぐにチェックされていましたが、以前はけっこう喜怒哀楽が出てくるタイプだったとか。それが昨年プロに転向してからは、お父さんのアドバイスもあり、努めて笑顔を意識するようになったということです。

 

確かにゴルフというスポーツは個人技を争うスポーツで、自分が優勝してナンボという世界なのかもしれません。でもゴルフ業界としての盛り上がりがあって初めて、スポンサーが付き、試合数が増えたりし、更にはゴルフ人口のすそ野が広がることになることは自明のことです。

 

その頂点にあるプロ選手は、個人競技でありながら、同時にゴルフファンを増やす団体戦を行っているという意識を持つ必要があるのだろうと思います。例えば男子ゴルフの石川遼プロが選手会の会長として、国内の男子ゴルフをある意味“興行”として盛り上げる様々な工夫をしていることは、選手に対しても意識変革を迫るもので、その責任感に学ぶところがあります。

 

試合を見に来てくれるお客様だけでなく、テレビ観戦する見えないゴルフファン、テレビやネットのニュース、また新聞で目にする人たちの話題になるスポーツであることが、結局のところ、後に続く人たちを生み出し、業界として生き残ることが出来るのだろうと思います。

 

最近はスポーツ選手が「試合を楽しむ」という表現をしても、そんなに違和感なく受け入れられるようになって来ているように思います。ちょうどオリンピックの話題で盛り上がっていますが、かつてマラソンの円谷選手が自分の記録が伸びないことに苦しみ、国を背負う重圧に耐えられず、ついに自殺してしまったという悲しい出来事もありました。

 

時代は変わりました。緊張感の中で自分のベストを出すための笑顔です。そしてプロになってまだ一年なのに、自分のプレーをお客様に見せ、プロ選手らしい魅せる技術を試合本番でも表現するために笑顔でいること、笑顔という世界共通で最高のコミュニケーション・ツールを自覚している渋野選手20歳の凄さを思います。

 

その技術面で特に印象的というか、なんといっても今回の優勝に関わる決定的な決断の場面がありました。まず最終日を2打差トップで迎えたにもかかわらず、途中で落として11番ホール時点では逆にトップと2打差の3位に後退していました。ところが次の12番のパー4で、世界のトッププレーヤーも出来なかった攻めの決断を彼女が行ったという事実、やっぱりスター選手にふさわしい華がある象徴的な場面だったと思いました。

 

253ヤードと短いパー4ですが、ワンオンを狙って少しでも逸れてしまうと、グリーン右にある池につかまってしまいます。多くの選手が手前に一度きざむ中、彼女は「ドライバーを持たなかったら悔いが残る」と振り切った渾身の一打が、グリーンの右端ギリギリに落ち、しかもナイスキックで池と反対のグリーン側に跳ねて乗ったのです。

 

ある意味ではラッキーだったのかも知れません。でも彼女はインタビューで「自信がありました」と答えていました。初参加、全英ゴルフという世界の大舞台で、優勝争いをしていても何も臆することなく、自分の練習に裏打ちされた自信に最大限のスポットライトを当て、決して無謀ではないチャレンジをしたショットだったことに間違いありません。

 

そこから一気にトップに並び、最終18番ホール、5mのスライスラインを読み切り、ど真ん中からカップの壁に当てる強気のバーディパットを決めての優勝です。本当に感動しました。渋野選手は2週間前には想定していなかった、帰国後この1週間の変化に自分自身驚いているのかも知れませんが、彼女が試合中に頬張っていた「酒のおつまみ」のような「タラタラしてんじゃね~よ」も想定外の注目です。

 

本人も周りも、世の中何が起きるか分かりません。運も実力のうちと言いますが、やっぱり練習をしっかり行い、準備をしておかないと、まず“いい運”そのものが近づいて来ないことも渋野選手(通称しぶこ?)から学びました。