障害者をしめ出す社会への警鐘 | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

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日本障害者協議会代表の藤井克徳さんが書かれた「障害者をしめ出す社会は弱くもろい」という本を読みました。視覚障害者である著者が、雑誌に連載されていたものを基にして一冊にまとめたものです。

 

たしか昨年だったと思いますが、藤井さんが第一経営のお客様でもある「社会福祉法人鴻沼福祉会」の斎藤なを子さんたちと一緒に、ドイツの収容所跡など視察に行かれたNHKの番組がありました。

 

この本でも最初の方に、ナチスドイツ下で行われた「障害者安楽死計画」いわゆる「T4作戦」が紹介されています。その作戦の下、当時ドイツ国内で20万人以上、ヨーロッパ全体では30人万人以上の精神障害者と知的障害者が虐殺されています。しかも衝撃的なのは、障害の重い人たちを「価値なき生命」として精神科医を中心にした医療関係者が、その虐殺に積極的に加担していったと言われていることです。

 

「価値なき生命」とは、すなわち、働けない、兵士になれない「生産性なき生命」ということです。「生産性がない」という言葉、LGBTに対する無知な自民党の女性国会議員の言動として話題になっていましたが、今なお取り巻きの一部与党内だけでなく、それを擁護する「新潮45」の特集が組まれるなど、一種異様な風潮というか現実があります。

 

藤井克徳さんは、最近のアメリカやヨーロッパなど世界に蔓延している「優性思想」や「排外主義」との共通性に危機感を述べられています。日本においては2016年に起きた相模原市の「津久井やまゆり園」で起きた障害者の大量殺傷事件はその象徴的な事件でした。

 

ただ一方で、今は「障害者権利条約(200612月・国連総会)」がつくられる時代でもあります。日本政府の人権問題に対する消極的な姿勢は変わらずとも、世界が大きく変化してきていることも確かです。国連は「一部の構成員をしめ出す社会は弱くもろい」として、多様性を許容することの重要性を明言しています。

 

この間は、当然のこと日本においても様ざまな裁判などを通した運動が起こって来ています。「あきらめない、ぶれない、こびない」というフレーズがそこにはあると言われます。そして「私たち抜きに、私たちのことを決めないで」というフレーズもまた、象徴的な言葉として障害者運動の求心力となり、運動を支える力になっているようです。

 

最近のニュースを見ると「働き方改革」という名のもとに定年制の延長をいうだけでなく、あわせて年金制度をはじめとした社会保障の切り捨てを言い、そこに胸を張っている総理大臣がいます。「改革」という言葉のイメージは基本的に前向きなものなのに、やっている内容は全くもって後ろ向きで、そこに5年後、10年後の夢や希望を見ることはできません。

 

貧弱な社会保障をさらに切り下げながら、仮に自己責任や応益負担論を強く言うのなら、森友・加計問題はどうなるのだろう。権力者の関係者が税金を使って優遇される、この矛盾をどう考えたらいいのか、何も解決していない疑惑の後始末をしっかりやってからにして欲しいものです。

 

税や社会保障を通じて所得を再分配する以前に、逆に意図的に格差が生まれるシステムをつくり、そして落ちこぼれた弱者を排除していく社会には、どう考えても持続可能なイメージを持つことは出来ません。少なくとも障害者問題がその最先端にあることだけは確かです。