戒名でこんな話がある【青山の団十郎の墓に詣でた時、六代目は側の者にむかって「お前は親の戒名がソラで言えるか」と聞いたところ、ソラで言える人は殆どいなかった。 

「これだから戒名などというものはいけない。あれは坊主の金儲けから割り出したものだ。己が死んだら戒名は六代菊五郎で結構だ」

「六代菊五郎じゃあんまりあっさりしすぎます。その下に居土を付けたらどうでしょう」

「それじゃ六代菊五郎居士とでもするのだな」

「やっぱり院号がないと戒名になりません」と言うと「そんなに院号がつけたかったら、おれは芸術家だから芸術院とでもするんだな」
 
この時の意を体して、六代目の戒名は「芸術院六代菊五郎居士」としたのである】

葬儀を執り行った住職は、相手が有名人だけに「それはいいご戒名ですなぁ」と顔は笑い、心では「戒名はあなたが付けるのではない」だっただろう。
 
葬式坊主は「一文字でも多いほうが極楽に導かれます」と商売をする。

俗名でもいい。あの世は生前の行い如何によって違うのです。