障害のある子どもたちが放課後や休日に支援を受ける「放課後デイサービス」などを三重県内で運営する会社が、ワインの製造販売に挑戦する。学齢期を終えた障害者の就労を支えるとともに、「好きな仕事」を見つけるきっかけにしてもらおうという取り組みだ。
2013年に設立された株式会社「ケアプロフェッショナル」は、伊勢市と明和町の計4カ所で放課後デイサービスを、桑名市など6カ所で高齢者向けリハビリ施設を運営する。社長の岩崎直明さん(41)は常々、特別支援学校などを卒業した障害者たちが「好きだ」と思えるような仕事先を見つけることの難しさを感じていた。
3年前、同社が伊勢市で営む施設「放課後の家 伊勢明野」に通っていた女の子の日常の行動が発端になった。重度の知的障害があるその子は、レクリエーションの一環で作業をする畑で、収穫した野菜をいつも握りつぶしてしまう。
「こうした子どもたちに、誇りとやりがいが持てる仕事を確立したい」。岩崎さんが思いついたのが、ブドウをつぶしたあとで醸造するワイン造りだった。
知人を通じ、2018年に欧州原産のブドウ栽培に着手した。農業の経験がない岩崎さんは、施設の近くの耕作放棄地10アールを借りて、手作りのハウスで栽培を始めた。
ブドウの実がなるまでには3~5年かかる。岩崎さんは障害のある子どもたちと一緒に鉢植えのブドウを丁寧に育て、昨年10月に初めての収穫ができた。果実は県外のワイナリーに持ち込まれ、ワインの醸造試験を行った。
岩崎さんは21年度中にも、学齢期を終えた障害者向けの就労支援施設を立ち上げ、ブドウの栽培を本格化させる考えだ。将来的には作付面積を50アールにまで広げ、醸造免許の取得も目指す。
ブドウをいちから育て、ワインを醸し、販売する。通信販売も手がける予定で、そのための環境整備も必要だ。ラベルのデザインや在庫管理も重要になってくる。様々な種類の仕事が派生してくることになり、岩崎さんは「障害のある人たちの個性や意思、特技が生かせる仕事がいろいろあるはず。事業として何とか成功させたい」と意気込む。
同社の取り組みに共感してくれる企業も現れた。化粧品などを製造する「御木本製薬」(伊勢市)は、土壌改良に使ってもらおうと、カルシウムが豊富なアコヤガイの貝殻や貝肉を提供してくれている。
早ければ3年後、ワイン製造販売を軌道に乗せようという岩崎さんは「障害のある人たちが、社会の中で生き生きできる仕事場にしたい」と話している。
朝日新聞デジタル記事・2021年1月18日
https://www.asahi.com/articles/ASP1K6VYRNDLONFB00J.html?fbclid=IwAR0on6vehgLOWf-FjYKrEejMEmv5XWWOUN0ssJbxSwqcKfX9WuVNQAJ5FEQ