宴会場での仕事は、数をかぞえることが大事だと思います。宴会場では、あつかう数字が大きいので、まちがう確率も高くなるからです。

 かぞえるものは食材だけでなく、器であったり、使用する器具であったり、多岐にわたります。ほかにも、宴席のお客様の人数があります。

 

 飲食業において、宴席の人数変更は日常茶飯事で、宴会がはじまってから、人数が増えていた、ということも少なくありません。

 お客様の数が多い場合、増える人数もひとりふたりではなく、それ以上の数が追加されます。サービス係と何度も打ち合わせをし、確認していてもそうなるのですからどうにもなりません。ある程度、増えることを想定して食材をそろえ、準備をすすめていくしかないといえます。

 

 数の確認は、とにかくいつでも、どんなものでも、かぞえるしかありません。食材を発注するところからはじまり、仕込みするときも、調理するときも、盛りつけをするときも、料理を運ぶときも、とにかくすべてかぞえます。

 仕込みのときにかぞえたからいいだろう、とか、盛りつけをしたときに確認したから大丈夫だろう、と思って、どこかでかぞえることをサボると、えてして、そこでミスが発生します。

 

 ミスの発端はあらゆる場面に潜んでいます。ミスを回避するためには、ささいなことでも確認し、他人の情報を鵜呑みにせず、実際に目で見ることが大切だと思います。数をかぞえることが重要だといえるのは、これまでたくさん失敗してきたからです。失敗して、自らが痛い目にあわないと、身につかないこともあるのです。

 

 料理を盛りつけし終わったら、あとは数をまちがえる場面はなさそうにもみえます。あとはサービス係に料理を運んでもらうだけですから、サービス係がまちがわなければいいのです。と、こんなふうな考えが、失敗を生むきっかけになります。

 

 宴会場では料理の数が多いので、提供時間より前に盛っておいて、最後の仕上げを提供時に行います。冷たい料理は冷蔵庫に、温かい料理は温蔵庫に入れて保存するのです。

 宴会場には移動できるように、車輪のついた冷蔵庫、温蔵庫があります。家庭用のタテ型の大型冷蔵庫が、そのまま移動するようなイメージです。この冷蔵庫の中に器に盛りつけした料理を入れて、厨房から宴会場のバックヤードまで運ぶわけです。

 

 宴席の人数が多いと、料理を入れた冷蔵庫の台数も増えます。この料理をしまった冷蔵庫の台数を把握しておかないと、料理が足りない、という事件が起こります。

 冷蔵庫3台に料理をしまったのに、宴会場に運んだのは2台だけだったということがありました。「料理が足りない」といわれて、「えっ?そんなはずはない」と思っていたら、厨房に料理が入ったままの冷蔵庫が取り残されていたのです。

 

 冷蔵庫の中は見えないので、1台に何人分の料理が入っているかは、厨房のスタッフしかわかりません。そこの数の共有ができていなかったことも原因だともいえます。数をかぞえることに関しては、宴席が終わり、お客様が帰られるまで、気が抜けないのです。