いま、私はケガをしています。ケガといっても指を切っただけなのですが、切った状況があまりよくないのです。休日に、自宅で料理をしていて指を切ったからです。

 仕事以外で指を切るというのは、プロの調理師としてははずかしい気がします。タクシードライバーが自家用車で事故を起こしたらカッコ悪いですし、警察官がスピード違反で捕まったら大問題になります。それと同じくらい、調理師が自宅でケガをするのはいけないことだと思っています。

 

 仕事中は、時間やお客様や上司といった、さまざまなプレッシャーがあるので、「手元がくるった」ということがあっても仕方がないといえます。

 自宅で料理するときは、そんなプレッシャーはありません。プレッシャーがなさすぎて、ビールとか飲みながら料理しているのですから、ケガをしても、同情などされるはずがないのです。

 

 ケガ以外でも、休日中に風邪をひいてしまったりするのも、よくないと思います。「連休をもらって旅行してきました」はいいですが、そのあとで「風邪ひきました」とか「体調が悪い」といわれると、言葉がありません。連休したあとに、今度は風邪のために連休するとなると、「いったい何日休むの?」と思ってしまいます。

 故意に病気になるわけではないので仕方がないのはわかります。そうだとしても、注意することは大事だと思います。

 

 以前私が勤務していたところでは、スキー・スノーボード禁止といわれていました。個人の趣味やレジャーを、会社に禁止されるいわれはないので、これは暗黙のルールといえます。とはいえ、わりと真面目に遂行されていたと思います。

 上司からも再三注意されていました。口調は冗談っぽい感じでおだやかなのですが、目が笑っていないというか、「わかってるだろうな」という圧力はつねにありました。

 

 スキー・スノーボードが禁止になったのは、スキーに行って骨折し、入院した人がいたからです。その人が入院した時期が12月、1月という、一年でいちばん忙しいときでした。ほんとうに猫の手も借りたいシーズンに、丸々2カ月休んだことになります。

 これは私が勤務する前の出来事だったので、厨房がどんな状況だったかはわかりません。しかし、そのあとでスキー・スノーボードが禁止にされたことをみれば、どうなったかは想像がつきます。

 

 ケガをした本人がいちばん痛い思いをし、辛かったことは察します。しかしながら、社会人というのはつながっていますから、本人だけの問題でおさまるものではありません。少なからず、周りの人々への影響はあるわけです。遊んでいるときの不注意のケガによって、周りの人々を巻き込んでしまうのは、大人としてはマズイ行為だと思います。