キノコのてんぷらを大量に揚げる機会がありました。大人数の宴席があり、そのビュッフェ料理のメニューにてんぷらがあったからです。単価が低い宴席でしたので、食材はキノコが数種類と、野菜を使いました。

 てんぷらを揚げるのは、数によっては1時間を超えるときもあります。のんびりやっていると、あっというまに料理を出す時間がきてしまうので、急いで揚げていかないといけません。

 

 早く揚げたいので、てんぷら鍋の中に食材を多めに入れてたいのですが、入れすぎると鍋の中の油の温度が下がってしまいます。温度が低すぎると、てんぷらはうまく揚がらないので、油に入れる数は加減が必要です。

 

 てんぷらは、衣に火が通ることで食材をコーティングし、油が直接つかないようになっています。食材をコーティングし、密閉空間をつくって、蒸し器と同じ状態にするわけです。

 油の温度が低くなると、衣に火が入りにくくなるので、密閉空間がつくれなくなります。密閉空間がつくれないと蒸し器状態にならないばかりか、食材が油に直接触れてしまいます。油の温度が低いと、衣も、なかの食材も油を多く吸収してしまい、ベチャっとしたてんぷらになってしまいます。

 

 キノコをてんぷらにするとき、油の中にたくさん入れすぎると、よくないことに気がつきました。ほかの野菜と同じような数を油の中に入れたのですが、予想以上に油の温度が下がってしまったのです。

 キノコの成分は90パーセントが水分です。ですから、キノコばかり大量に揚げていると、ほかの食材のとき以上に油の温度が下がるのです。はじめは適温だったのですが、キノコの大量投入で、急激に下がってしまい、鍋底まで沈んでしまうくらいでした。

 

 ほんとうは一度揚げるのを止めて、温度が上がるまで待たないといけないのですが、時間がないので待っていられません。火力を全開にして、鍋の中に入れる数をすこし減らして、揚げていきました。

 火力を全開にしたら、すぐに油から煙がでてきそうに思いますが、そんな気配はまるでありません。キノコを揚げているかぎり、油の温度は170℃くらいから上がることはなさそうです。

 

 てんぷらにしたキノコはエノキダケ、マイタケ、エリンギ、シメジです。どのキノコも水分は90パーセント以上あるのですが、エノキダケはほかのキノコよりいくぶん少ないです。

 キノコは値段が安く、数もとれるので厨房にはやさしい食材です。だからといってキノコばかり大量にてんぷらにするのも問題だな、と思いました。