名古屋には何度か行ったことがありますが、名物料理がたくさんあっておもしろいところだと思います。味噌カツ、きしめん、小倉トーストなど、名古屋ならではのオリジナリティがあるものばかりです。ベースとなる料理はどこにでもある料理なのですが、アレンジの仕方が独特なのです。

 

 あんかけスパゲティも名古屋の名物のひとつです。以前働いていたところで、私はあんかけスパゲティを作っていました。名古屋名物として存在していることを知らずに、です。

 そのときは、日替わりランチのなかにパスタがあって、パスタのメニューも毎日ちがいました。毎日ちがうといっても、パスタのソースはだれでも知っているような基本的なものが数種類しかありません。ですから、ソースの風味をすこし変えたり、なかの具材を変えたりしながら、なんとか一か月まわしていました。

 

 そのメニューのなかのひとつに、あんかけスパゲッティがありました。あんかけスパゲティのヒントになったのは、あんかけ焼きそばや皿うどんだったと思います。焼きそばもパスタも同じ麺類なのだから、スパゲティにあんかけも合うのではないかと思ったのです。

 私が作っていたあんかけスパゲッティは、しょうゆを使った和風味です。名古屋のあんかけスパゲッティは、ソースやケチャップを使ったスパイシーなあんですから、味わいは異なります。

 

 しかも、私が作っていたものは、あんを上からかけるのではなく、パスタにからめていました。イメージとしましては、中華料理の八宝菜がパスタのソースになっている感じです。

 ニンジンやタマネギ、チンゲンサイなどが入ったしょうゆベースのあんを作り、それをトマトソースのパスタと同じようなやり方で合わせていました。トマトソースのかわりに、野菜が入ったあんを使うということです。和風パスタがあるのだから、しょうゆ味のあんをソースにしても大丈夫だろう、と思ったのです。

 

 名古屋のあんかけスパゲッティの、あんを上からかけるのは、スパゲッティとしては異質な感じがします。私が作ったあんかけスパゲッティも、野菜がたくさん入っていたので、パスタとしては異質だと思います。

 本来のパスタはソースをからめるだけであり、具材はないものです。あったとしても、ベーコンとかハーブ類だと思います。具だくさんのソースで、ボリューム感や贅沢さを演出するのは中華料理の発想です。パスタといえど、小麦から作られた麺なのですから、うどんや中華麺を使った料理と同じようなアレンジは合うと思います。